1995 Fiscal Year Annual Research Report
口承文芸の記述のための表意文字による合理的な壮語表記の在り方
Project/Area Number |
07710220
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
手塚 恵子 大阪大学, 文学部, 助手 (60263183)
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Keywords | チワン(壮)語 / 口承文芸 / 識字 / 表音文字 / 表意文字 / 漢字 |
Research Abstract |
中華人民共和国広西壮族自治区では、歌謡を口承と書承によって伝承してきた。書承によって伝承する場合には「方塊字」とよばれる表意文字が使用されてきたが、1950年代以降は、言語学的言説に基づいて制定された表音文字である「現代壮文」を使用することが推賞されている。しかし記述者の側からすれば、「現代壮文」は表記体系が厳密なためにその修得者が少なく、「方塊字」は非系統的であるがゆえに修得が困難となっている。本研究ではこれまで私が収得したテキスト(「方塊字」と「現代壮文」が併記された歌謡テキスト)をもとに、合理的な壮語記述の方法を考察することを試みた。なおその手順は以下の通りである。 1歌謡テキストを整理し分析対象となる言葉300語を選定した。2言葉ごとに「国際音標文字」「現代壮文」「方塊字」「それに対応する近接した漢字」または「漢字に表すことのできない理由」を併記し、コンピュータに入力し、データベースを構築した。3選定した言葉を漢字に置換する可能性を考察する。4これらの作業と並行して、「現代壮文」「方塊字」が形成された経緯とその表記法の理論的枠組みについて考察をおこなった。現在3を考察中である。 全般的な問題点として、使用者(想定使用者は漢字教育を3年程度受けた壮族の農民)は、漢字の「山」、「方塊字」の〓をそれぞれshang,byaと異なった存在として認識しているため、byaを「山」と記述することに抵抗感があることがあきらかとなった。
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