1995 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀バラッド詩の模倣と独立(Rossetti, Meredith,Swinburne)
Project/Area Number |
07710340
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Research Institution | Fukuoka Jo Gakuin University |
Principal Investigator |
中島 久代 福岡女学院大学, 人文学部, 助手 (90227778)
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Keywords | バラッド / 伝承バラッド / バラッド詩 / 19世紀英詩 / リフレイン / Rossetti / Meredith / Swinburne |
Research Abstract |
(1)伝承バラッドおよび近代以降のバラッド詩の意義の確率のために、本研究では19世紀のGeorge Meredith、A.C.Swiburne、Dante Gabriel Rossettiが創作したバラッド詩の模倣と逸脱を分析し、19世紀におけるバラッド受容の意味の考察を目的とした。 (2)各詩人の作品分析:Rossettiのバラッド詩の特色は様式化の模倣、特にリフレインであるが、'Sister Helen'に代表されるように、伝承バラッドの様式を用いて語り手の感情の高ぶりや自我の葛藤を一層効果的に表現する明らかな技巧であり、自意識とは無縁であったリフレインをセンチメンタルリズムに貢献させる逸脱を示している。他方、晩年の長編バラッド詩では、技巧を超えて、終焉を迎える人間の感慨を託す自然な型として捉えられており、Rossettiにとってのリフレイン技巧の意味は生涯を通して大きく変化した。 Swinburneはdramatic & lyrical poetryがnarrative poetryに優ると自ら述べているものの、作品の官能性や異教性が示す中世趣味は、ラファエロ前派のケルトへの興味と、ひいてはバラッドのnarrativeへの興味に関連する可能性を秘めている。更に研究を要す。 Meredithのバラッド詩は、時事を風刺し時代の風潮を嘆くものが大半であり、それを素朴なバラッド・スタイルに乗せることによって風刺を強めている。これは当時流行したパロディ・バラッドの精神にも通じる、伝承バラッドの様式とスタイルが持つ批判的精神を19世紀のブロードサイド・バラッドとして受け継いだ、と捉えることができる。 (2)バラッド受容の意味:模倣を超えるリフレイン、ケルトへの興味、風刺とパロディがバラッドのスタイルで表現されるのは、19世紀という閉塞した時代とその文学に対する批判を、バラッドの様式を選択することによって、伝承バラッド本来の批判的かつ遊戯的精神に託して伝えようとしたことにあると思われる。以上を論文にまとめる予定である。
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