1995 Fiscal Year Annual Research Report
法治国家原理と迅速な刑事裁判手続との緊張関係に関する比較法的研究
Project/Area Number |
07720038
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
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Keywords | 公正な裁判 / 刑事手続 / 欧州人権条約 / 法の支配 |
Research Abstract |
本研究の目的は、「法の支配」と「公正な裁判を受ける権利」に着目した、刑事手続の国際比較である。それとともに、各国の刑事裁判実務の統一に欧州人権条約が及ぼした影響をも検討した。 1 第1の論文「刑事法における欧州統合の意義」(『法政理論』49巻1号(1996年5月掲載予定))では、後者の問題を論じた。そこでは、欧州人権条約第5条及び6条に関する欧州委員会および人権裁判所の実務は、各国の裁判に大きなインパクトを与えたことが示されている。以前、欧州の大部分の国々では、公判前の捜査はあまり厳格には規律されていなかったし、被告人の法的地位は弱かった。公判の結果は、ほとんど公判前の捜査によって決まるのに、である。欧州人権条約に定められた諸々の保障は、被告人の立場を強化し、その結果、刑事手続の捜査段階における権利バランスのよりよいあり方を気付かせることとなった。 関連論文「日本における宗教団体の犯罪」(Stefan Bauhofer/Pierre-Henri Bolle/Vokler Dittmann編『宗派、オカルト-刑事学的側面』(チューリッヒ、1996年)所収)では、日本の刑事手続における宗派の犯罪の問題を探求した。欧州人権条約締結以前のスイスと同様に、公判前の手続期間における捜査当局の権利と逮捕者・拘留者の権利の間で、バランスが欠けていることは明らかである。別件逮捕・拘留や接見禁止の実務は日本国憲法に定められた保障を侵害しているように思われるが、裁判所はこうした実務を広範に支持している。さらに、この事実は、日本の刑事裁判では、自白が重要な要素となっていることと強い関連性がある。国際的な人権保護文書は、欧州人権裁判所のような有効な司法審査権力が伴えば、日本の裁判所を公判前における公正な裁判と法の支配の国際水準へと引き上げてくれることになろう。
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