1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07730008
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
下村 研一 京都大学, 経済研究所, 講師 (90252527)
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Keywords | 提携ゲーム / 交渉集合 / プリカーネル / コア / 極限定理 |
Research Abstract |
本研究の目的は、経済をはじめとする多数の多様な個人が構成する社会において利得と資源の配分問題がどのように解かれているかに仮説を設け、それを合理性、効率性、整合性の観点から考察することにあった。取り組んだ研究とその実施結果は以下の3つにまとめられる。 1 提携ゲームの交渉集合 利得が個人間において貨幣単位で移転可能である、ということを仮定すれば、(マス‐コレル&ジョウ型)交渉集合は社会全体の利得の総和を最大にする提携構造では非空であり個人合理性と効率性を満足するが整合性は満足しない。移転可能性を仮定しなければ、交渉集合は少なくともひとつの提携構造では非空で個人合理性を満足するが必ずしも効率性は満足しない。 2 提携ゲームのプリカーネル 利得が個人間において貨幣単位で移転可能であると仮定すれば、プリカーネルは全員が結託する提携構造では非空で効率性と整合性を満足するが、必ずしも個人合理性は満足しないことはすでに証明されていた。本研究では新たに利得の移転可能性を仮定しなければ、プリカーネルは全員が結託する提携構造で効率性整合性を満足するが、必ずしも非空にはならないこと、さらに効率性整合性および「ナッシュの公理群」を満たす唯一の解であることが示された。 3 古典的経済環境のコア 古典的経済環境において、エッジワ-スが定義したコアは非空であり(定義より)個人合理性と効率性を満足し、経済を反復して得られるコアの極限が完全競争的資源配分の集合であることはすでに証明されていた。本研究では新たにシャプレイが定義したコアは非空であり(定義より)個人合理性を満足するが必ずしも効率性は満足しないこと、しかし経済を反復して得られるコアの極限はやはり完全競争的資源配分の集合であることが示された。
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