1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07740268
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Research Institution | Okazaki National Research Institutes |
Principal Investigator |
間瀬 一彦 岡崎国立共同研究機構, 分子科学研究所, 助手 (40241244)
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Keywords | 表面動力学 / 電子刺激脱離 / オージェ刺激脱離 / 内殻電子励起 / 電子-イオン・コインシデンス測定 |
Research Abstract |
表面分子のオージェ過程に起因するイオン脱離の研究は、萌芽的基礎科学として重要であるばかりでなく、1)気相分子の電子励起ダイナミックス、2)電子ビームによる表面加工、3)オージェ電子分光による表面分析など、関連研究に貢献する重要な分野である。我々は、オージェ過程誘起イオン脱離の機構の詳細な解明を目的として、オージェ電子-イオン・コインシデンス(AEICO)測定を用いた研究を進めている。AEICO測定は同一の励起過程によって表面から放出されるオージェ電子とイオンを、電子のエネルギーを選別し、イオンの質量も選別して、同時に検出する手法である。AEICOを用いると、オージェ終状態を選別したイオン脱離収量測定ができる。我々の開発したAEICO装置は電子銃、鏡面円筒型電子エネルギー分析器(CMA)、飛行時間型イオン質量分析器(TOF)などからなる。本装置の特長は、1)感度、電子エネルギー分解能、イオン質量分解能が高い、2)操作性が高く安価である、などである。我々は、SrTiO_3(100)単結晶表面上に吸着したフッ素(F/SrTiO_3(100))を試料としてAEICO測定を行なった。FはTi_2^+あるいはSr^+上に負イオンとして吸着していると考えられる。我々は、F(KL_<23>L_<23>)オージェ電子放出と同時に脱離したF^+イオンを検出し、F^+の脱離機構として、1)Fls内殻電子の励起、2)F(KL_<23>L_<23>)オージェ過程によるF^+の生成、3)F^+とTi_2^+あるいはSr^+間のクーロン反発によるF^+イオン脱離、という3段階の機構(KFモデル)を支持している、などの知見を得た。また、H_2Oの凝縮固体表面のAEICO測定を行ない、1)O(KVV)オージェ終状態を経由して、H^+が脱離する、2)O-H結合性価電子軌道に空孔を持つオージェ終状態からのH^+の脱離確率が大きい、などの知見を得た。
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