1995 Fiscal Year Annual Research Report
高圧下でのメスバウアー分光法による遷移金属化合物の電子構造研究
Project/Area Number |
07740276
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
小林 寿夫 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (40250675)
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Keywords | 高圧力 / メスバウアー分光法 / 非金属-金属転移 |
Research Abstract |
超高圧下メスバウアー・スペクトル測定法を確立し、超微細相互作用の圧力依存性及び超高圧下X線回折による体積の圧力依存性から物質の電子構造に関する実験的研究を行った。 超高圧下メスバウアー分光測定は、殆ど全てのグループが安定同位体^<57>Feを濃縮した特別な試料を用いて行われている。今回、高密度メスバウアー線源の使用及び高いエネルギーγ線のコンプトン散乱による14.4keVメスバウアーγ線への影響の少ないクランプ型ダイアモンド・アンビルセルを設計する事により、非濃縮試料でも十分な吸収スペクトルが測定可能で有することが解った。すなわち3d遷移金属元素あたり2%程度(不純物程度の量でも)の^<57>Fe安定同位体が存在すればFe系の化合物でなくともメスバウアー効果の測定が可能である。 常圧下において磁性非金属物質であるFeS及び3c-Fe_7S_8の室温での超微細相互作用の圧力依存性を測定した。その結果、FeS,Fe_7S_8はそれぞれP_c=6.5,4.5GPaで内部磁場が消え、アイソマ-・シフトが不連続に変化していることが解った。この超微細相互作用の不連続の変化は、Feの3d電子分布変化とそれによる磁気秩序の消失と考えられる。アイソマ-・シフトの圧力依存性と高圧下X線回折による体積の圧力依存性の結果よりP_c以下でのアイソマ-・シフトの体積依存性はそれぞれイオン結晶のそれとほぼ同じ傾向を示し、P_c以上では金属的な体積依存性を示すことが解った。更にP_c以下での内部磁場の圧力依存性を考察することにより、FeSは磁性半導体-磁性半金属-非磁性金属とFe_7S_8は磁性半金属-非磁性金属と圧力の増加と供に電子構造が変化することが推定される。 今後、物質の電子構造の推測のためには磁気秩序温度の圧力依存性の等の影響の少ない低温(4.2K)での高圧下の測定及び超微細相互作用の圧力下での温度依存性の測定は不可欠であり、現在計画中である。
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