1995 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属を含む多重項ラジカルのマイクロ波分光法による研究
Project/Area Number |
07740456
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Research Institution | Shizuoka University |
Principal Investigator |
岡林 利明 静岡大学, 理学部, 助手 (70224045)
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Keywords | 遷移金属 / 多重項ラジカル / マイクロ波分光 |
Research Abstract |
本研究の目的は、不揮発性の遷移金属を含む多重項ラジカルのマイクロ波分光法を用いた検出法の確立、およびそれらの分子種の構造、結合性、電子分布等の性質の究明である。そこでまず第4周期の遷移金属(Sc,Ti,V,Cr,Mn,Fe,Co,Ni,Zn)の化合物、とくに酸化物とハロゲン化物についての研究を行った。遷移金属を含む多重項ラジカルの生成のために、次の3種の生成法の開発を行った。 1、電極からの金属原子のスパッタリング:この方法の有効性については、先のCrClラジカルの生成である程度証明されていたが、わずか一年余りの間にさらにFeCl、CrFラジカルのマイクロ波スペクトルを初めて検出することができた。Cr、Feの供給源としてはステンレス電極を用いた。ステンレスはおよそFe:Cr:Ni=7:2:1の組成を持つ合金であるがFeだけでなくCrの供給源としても有効であった。またCrClの電子基底状態の性質は、同じハロゲン化物であるCrFとはやや異なっておりむしろ水素化物であるCrHと近い事が分かった。これは、フッ素原子の大きな電気陰性度がクロム原子の配位子場に対して強く作用しているためではないかと考えている。以上の様に電極からの金属原子のスパッタリングは、マイクロ波分光法において予想以上に有効であることが分かった。 2、揮発性金属化合物の利用:上記の方法とは逆に、この方法は現在のところ有効ではない結果のみが得られている。数々の揮発性金属化合物を用いて多重項ラジカルの生成を試みたが、まだ検出にはいたっていない。これはラジカルは気相反応では生成せず、電極表面での反応により生成していることを示唆しているのではないかと考えている。これについては、今後さらに解明してゆくつもりである。 3、高温セルの利用:時間的に完成させることができなかったが、今後主力の方法として開発を進めてゆく。
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[Publications] Tomoko Oike: "Laboratry Millimeter-Wave Spectrum of Chromium Monochloride" Astophysical Journal. 445. L67-L68 (1995)
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[Publications] Mitsutoshi Tanimoto: "Microwave Spectrum of FeCl Radical in the Electronic Ground ^6Δi State" Chemical Physics Letters. 242. 153-156 (1995)