1995 Fiscal Year Annual Research Report
超短パルス制御によるマルチパルス衝動分光法の溶液のダイナミックスへの応用
Project/Area Number |
07740460
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
中島 聡 大阪大学, 基礎工学部, 助手 (80263234)
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Keywords | 超高速レーザー分光法 / 局所分子場 / 溶液のダイナミックス / 衝撃振動分光法 / パルス整形 / 液晶マスク / 振動モード / 蛋白質 |
Research Abstract |
本研究においては溶媒分子と溶質分子によって特徴づけられる局所分子場内における揺らぎの振動モードを直接かつ選択的に検出し、その溶液のダイナミックスに対する役割を明らかにすることを目指し、まったく新しい手法として最近進歩してきた超短パルス整形技術を用い、励起したい振動モードと全く同一周期からなるパルストレインをつくり、その振動モードを強制励起する衝動振動分光法を開発することを試みた。そのためにまずパルス整形の技術を確立することを目指した。このパルス整形技術は入射光パルスを何らかの形でフーリエ変換しそのフーリエ成分を空間的に投影させ、適当なフィルターを通すことでそのフーリエ成分にフィルター関数をかけ、逆フーリエ変換をしてやれば、整形されたパルストレインが得られると言う原理に基づいている。本研究で具体的にはモード同期Ti:Sapphireレーザー(半値幅80fs)を用い、これを回折格子で波長成分に分解し、その波長方向に広がったパルスを格子状の液晶マスクを通すことで、フーリエ(波長)成分にフィルター関数をかけ、さらにこのパルスを差分散の配置においた回折格子で逆フーリエ変換をしてやることで、時間領域において整形されたパルスを得ることができた。この液晶マスクは一本100μm間隔の格子128本からなり、それぞれにかける電圧を変化させることで、入射光の偏光面を変化させることが出来るので位相マスクとして用いている。ただこの液晶マスクは完全には連続対とはみなせないことと、位相だけで強度はフィルターできないことから任意の(位相、強度両方を制御した)パルス波形を得ることは出来ないことも分かった。今後は、われわれが従来の振動分光法で示唆した蛋白質や溶液の特異な振動モードの解明に向けて、そうしたモードを選択するため任意のパルス波形を得られるよう、液晶マスクの改良(強度マスクとの結合)や検出系の構築を計画している。
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[Publications] Satoru Nakashima: "Time-Resolved Resonance Raman Study of the Recombination Dynamics Photodissociated Carbon Monoxide to Sperm Whale Myoglobin and Its Mutants" Journal of Molecular Liquid. 65/66. 317-320 (1995)
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[Publications] Takamitsu Kouzuma: "Spectroscopic and Electrochemical Studies on Active-site Transitions of the Type I Copper Protein Psuedoazurin from Achoromobacter cycloclastes" The Journal of Biological Chemistry. 270. 25733-25738 (1995)