1995 Fiscal Year Annual Research Report
星間空間における炭化水素鎖分子と硫黄イオンの反応過程に関する理論研究
Project/Area Number |
07740470
|
Research Institution | Chiba Institute of Technology |
Principal Investigator |
松澤 秀則 千葉工業大学, 工学部, 講師 (30260847)
|
Keywords | 星間分子 / イオン-分子反応 / 電子状態 / 炭化水素鎖分子 / 硫黄イオン / ポテンシャル曲面 / 非経験的分子軌道法 / 配置間相互作用法 |
Research Abstract |
1、本研究では、星間空間における星間分子の形成過程のイオン-分子反応のモデルを検証し、さらに新しい反応過程や星間分子の可能性を探るため、硫黄を含む星間分子の形成・反応過程を分子軌道理論により調べた。反応は、炭化水素鎖分子C_nH(n=1-4)にS^+が反応してC_nS^+(n=1-4)が生成する過程で、まず各化学種の平衡構造および電子状態を決定し、次に反応中間体のポテンシャル曲面を描いた。分子軌道計算は全て本補助金により購入したHP712/80エンジニアリングワークステーションおよび分子科学研究所計算機センターのIBM SP2を用いた。 2、計算は全て非経験的分子軌道法により行い、基底関数としては、DZP基底を、エネルギー計算には2次のMφller-Plesset摂動法(MP2)を、さらに解析的エネルギー微分法で平衡構造を求めた。また中間体のポテンシャルエネルギー曲面の計算は、配置間相互作用(CI)法により行った。 3、C_nH(n=1-4)およびC_nS^+(n=1-4)は、いずれも直線型が基底状態となり、C_nH(n=1-4)にS^+が反応してC_nS^+(n=1-4)が生成する反応は、熱化学的には発熱反応であり、星間空間で実際に起こりうることがわかった。ただし、S^+がC_nHのC末端を攻撃し、同時にHが解離するのか、中間体を経由するのかがわからない。そこでCHにS^+が反応して、CS^+が生成する過程を詳細に検討した。この反応は熱化学的には2.8eVもの発熱反応である。中間体と考えられるHCS^+のポテンシャル面を調べると、S^+がC_nHのC末端を攻撃した場合、中間体HCS^+は折れ線型の3A′状態となり、Hの解離には低い反応障壁が存在する。また別の経路としては、分子領域で可視光を放出して安定なHCS^+(^1Σ^+,直線)を経由し(放射会合)、その後解離的再結合によりCS^+が形成される可能性があることがわかった。なお各化学種の安定構造に関する報告(論文)を現在投稿中である。
|