1995 Fiscal Year Annual Research Report
クロム錯体の特徴を利用した光触媒のデザインと立体選択的光反応の開発
Project/Area Number |
07740487
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
櫻井 英博 東京大学, 大学院・理学系研究科, 助手 (00262147)
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Keywords | アレーンクロム錯体 / ピリリウム塩 / 光触媒 / ジェン鉄錯体 / t-ブチルリチウム / 求核置換反応 |
Research Abstract |
クロム錯体の特徴を利用した光触媒のデザインと立体選択的光反応の開発を目指し,本年度においては,トリアリールピリリウム塩-クロム錯体の合成法の確立の検討を行った。まず、計画書に記載したように,芳香族ケトンと芳香族アルデヒドとのアルドール反応を用いる合成ルートの検討を行ったが,中間の2-ヒドロキシケトンのクロム錯体化の選択性が悪く,また生成したクロム錯体からピリリウム塩へ誘導することができなかった。そこでリチオベンゼンクロム錯体と2,6-ジフェニルピリリウム塩との反応を用いる経路により,3個のアリール基がすべてフェニル基のピリリウム塩-クロム錯体を低収率ながら合成することができた。そこで、本錯体の光物性測定のサンプル量を供給するため,現在本ルートの収率の向上について検討中である。 一方,関連物質として,中心金属を鉄に代えた錯体の合成を試みたが,その検討中,出発物質として用いたシクロヘキサジオン-鉄錯体が,t-ブチルリチウムなどの求核試剤に対してヒドリドの脱離を伴う異常な反応性を示し,形式的にカルボニル基のα位で求核置換反応が進行するという興味深い現象を見出した。また本反応はシクロヘキサジオン-鉄錯体のみならずある条件を満足した鉄錯体に全て共通して生じることがわかった。現在その条件の特定について検討を行っており,現在のところ,条件を特定するまでには至っていないものの,本反応はかなりの一般性を有していることが判明しており、新たな有機合成手法として活用できるのではないかと考えている。今後は前述の光触媒の開発と同時に本反応の研究も進める予定である。
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