1995 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属錯体と置換基に持つhypervalent化合物の合成と反応性
Project/Area Number |
07740523
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
久保 和幸 広島大学, 理学部, 助手 (90263665)
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Keywords | メタラホスホラン / 異常原子価 / 転位反応 / メタラホスフェート / 鉄錯体 |
Research Abstract |
本研究では遷移金属上にシクロペンタジエニル(Cp)環を持つメタラホスホラン(Cp(Co)_2Fe-PR_4)における、塩基によるホスホラン配位子のCp環への転位反応について検討した。 まずリン原子上に2つのカテコールをキレート置換基として持つメタラホスホランに対し、塩基としてリチウムジイソプロピルアミド(LDA)を反応させた。しかし出発錯体が不安定なためか系が複雑になり、転位生成物を確認することができなかった。次にo-アミノフェノールを2つ有する比較的安定なメタラホスホランを用いて同様な反応を行ったが、ここではCp環ではなくN原子上のプロトンが引き抜かれるために転位反応は見られなかった。そこでN上にプロトンの代わりにメチル基を導入したN-メチル-o-アミノフェノールを置換基として持つメタラホスホランを合成し、これとLDAとの反応を検討した。その結果、IR、^1HNMR、^<31>PNMR、MSスペクトルおよびX線結晶構造解析によって、生成物は異常原子価リンフラグメントがCp環へ転位した錯体であることが確認された。この反応はLDAのプロトン引き抜きによって生じたCp環上のアニオンが、3中心4電子結合によって正に分極したリン原子を求核攻撃することによって反応が進行すると考えられる。このとき中間状態においては、転位するリン原子が配位数を拡張し6配位となったメタラホスフェートを経由していると考えられるが、^<31>P NMRによる反応の時間追跡からは、この中間体を確認することができなかった。このメタラホスフェートにおいては、鉄原子が通常の共有結合の様式とは異なる3中心4電子結合によってリン原子を結合しており、この化合物の構造や性質は大変興味深い。現在この中間状態の確認および単離を検討中である。また今後はこの反応の立体科学についても検討する予定である。
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