1995 Fiscal Year Annual Research Report
訪花昆虫と植食性昆虫の季節性が高山植物の繁殖成功に及ぼす効果について
Project/Area Number |
07740591
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
工藤 岳 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助手 (30221930)
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Keywords | 植物生態学 / 高山植物 / 繁殖生態学 / フェノロジー / 性表現 / ポリネーション / 生育期間 / 雪田 |
Research Abstract |
高山植物の開花・結実フェノロジーと繁殖成功との関係を,訪花昆虫や種子食害昆虫の季節性の効果に着目し調査した.北海道大雪山系の雪田で,雪解け時期の異なる4箇所に20×20mの調査プロットを設定し,セリ科多年生草本のハクサンボウフウの開花・結実状況を,5月下旬から10月上旬まで定期的に観察した.プロット間で雪解け時期は6月上旬から8月下旬と大きく異なり,ハクサンボウフウの開花時期も7月中旬から9月中旬までと大きく異なっていた. 雪解け時期の早い場所では,開花時期の気温が低く,訪花昆虫の活性が低くために結実が花粉不足によって制限されていた.また,双翅目昆虫の幼虫による果実の食害が頻繁に観察された.雪解けが中程度の場所では,開花期の訪花昆虫の活性が高く,種子の食害も非常に低いために,高い種子生産を示していた.一方,雪解けの遅い場所では,受粉成功は高いが種子成熟期間が制限されているために,ほとんど結実できなかった.以上の結果より,雪解け時期の違いによって引き起こされた開花フェノロジーの変異は,種子生産成功度に大きく影響することが示された. ハクサンボウフウは,同一個体上に雄花と両性花を持つ雄性両全同株(andromonoecy)である.プロット間で各個体の両性花と雄性花の構成比を比較したところ,雪解けの遅いプロットほど両性花の割合が高くなっていた.このような性表現の変異は,それぞれのハビタットにおける訪花昆虫の活性や生育期間の制限に起因していると考えられる.雄器官・雌器官を通しての繁殖成功度が変化するときの最適両性/雄性花生産比を求めるESSモデルを作り,実際の野外データに当てはめたところ,モデルを支持する傾向が得られた. 以上得られた成果のうち,野外データについてはOpera Botanicaに掲載予定であり,モデルの当てはめについて現在論文作成中である.
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Research Products
(1 results)