1995 Fiscal Year Annual Research Report
植物集団における性の問題(性の進化、性比の偏り)の格子モデル
Project/Area Number |
07740593
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Research Institution | Muroran Institute of Technology |
Principal Investigator |
佐藤 一憲 室蘭工業大学, 工学部, 講師 (30261382)
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Keywords | 格子モデル / 空間構造 / 植物集団 / 接触感染 / 無性生殖 / ペア近似 |
Research Abstract |
研究代表者は,これまでに開発してきた解析手法(シミュレーションとペア近似解析法)によって,無性生殖生物集団での病気伝播による集団のダイナミクスについて,格子モデルによる研究をおこなった.この問題を明らかにすることは,“性の進化は病気によって促進されるのか"という生物学上の大問題を解明するためには必要である.格子モデルは,格子空間上に規則的に生育している生物個体間での相互作用による集団のダイナミクスを解析するのに極めて有効なモデルであり,特に植物集団では現実的である.Sato et al.(1994)では,接触感染のように局所的な個体間でしか病気感染がおこらない場合と,空気感染のように病気感染が広範囲に及ぶ場合とを比較した結果,前者では,感染率が大きいと集団全体に病気が蔓延することによって引き起こされる集団絶滅の可能性を理論的に示した.本年度は以下のようなモデルの拡張をおこなった.各格子点の状態は,3状態(感受性個体・感染個体・空き地)のいずれかである.感受性個体も感染個体も,それぞれ独立に死亡する.感受性個体も感染個体も,隣接した空き地に子供を生むことができるが,病気は必ず垂直感染する.感受性個体は,隣接した感染個体から病気を移される.このような単純なモデルを解析した結果,たとえば,感染率だけを変化させてを他のパラメータを固定すると,感染率が大きくなるにしたがって,感受性個体だけの集団,感受性個体も感染個体もいる集団,感染個体だけの集団に安定することがわかった.これらのモデル解析は,本年度の補助金で購入した高性能のパーソナルコンピュータ上での,数値計算とグラフィックスによる視覚化を行なうことにより遂行することができた.また,この成果は出張旅費による学会参加を通して発表を行なうことができた.なお,このモデルは論文に掲載済であるが,植生遷移のモデルとして解析することもできる。
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[Publications] Iwasa,Y.,Kubo,T.,Sato,K.: "Maintenance of forest species diversity and latitudinal gradient." Vegetatio. 121. 127-134 (1995)
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[Publications] Sato,K.,Konno,N.: "Successional dynamical models on the 2-dimensional lattice space." Journal of Physical Society of Japan. 64. 1866-1869 (1995)
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[Publications] Konno,N.,Sato,K.: "Upper bounds on order parameters of diffusive conatct process." Journal of Physical Society of Japan. 64. 2405-2412 (1995)
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[Publications] Harada,Y.,Ezoe,H.,Iwasa,Y.,Matsuda,H.,Sato,K.: "Population persistence and spatially limited social interaction." Theoretical Population Biology. 48. 65-91 (1995)
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[Publications] 佐藤一憲: "生態学における格子モデル-ペア近似の有効性" 日本生態学会誌. 45. 247-258 (1995)