1995 Fiscal Year Annual Research Report
精子プロテアソームによる運動制御機構の分子生物学的研究
Project/Area Number |
07740642
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
稲葉 一男 東京大学, 理学部, 助手 (80221779)
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Keywords | タンパク質リン酸化 / 精子 / ダイニン / プロテインキナーゼ / プロテアソーム / プロテアーゼ / 鞭毛運動 / サケ科魚類 |
Research Abstract |
サケ科魚類精子運動の制御にあけるプロテアソームの役割を解明するために、プロテアソームの内在生基質の検索を行った。SDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動により、精子運動開始前と後のタンパク質の分解を調べたが差は検出できなかった。このことからプロテアソームの内在生基質は鞭毛軸糸を構成するような構造タンパク質というよりも、なんらかの酵素あるいはその制御タンパク質の可能性が強いと考えられた。精子運動の調節にはタンパク質のリン酸化が関与することが知られており、プロテアソームがタンパク質のリン酸化調節に関与しているか否かを、プロテアソームの基質およびインヒビターを用いて検討した。cAMP非存在下では10種類ほどの軸糸タンパク質のリン酸化がリン酸化を受けたが、このうち分子量2万のタンパク質のリン酸化はプロテアソームの基質およびインヒビター存在下で阻害された。このタンパク質は高塩濃度溶液で軸糸から抽出され、ショ糖密度勾配遠心により外碗ダイニンの成分の一つである軽鎖2であることが明らかとなった。一方、cAMP存在下ではダイニン軽鎖2のリン酸化はプロテアソームの制御を受けなくなり、かわりに分子量1万5千のタンパク質がプロテアソームの制御を受けるタンパク質として同定された。このタンパク質を含む複合体は精子鞭毛基部に存在することが間接蛍光抗体法で明らかになっており、今回の研究でもダイニンのサブユニットではないという結果が得られた。以上のことからプロテアソームはプロテインキナーゼの活性を制御することにより鞭毛運動を制御していることが示唆された。また、精子鞭毛基部と鞭毛部とではプロテアソームによる調節機構がことなることも示唆された。プロテインキナーゼ内在性基質としてはプロテインキナーゼの調節サブユニットあるいはプロテインホスファターゼ等が考えられるがこれらの同定には至っておらず今後の課題として残されている。
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[Publications] K. Inaba: "Identification of a 10 S trypsin- like pratease that cross- reacts with anti- proteasome antibody in sea urchin egg jelly" Arch. Biochem. Biophys.319. 177-184 (1995)
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[Publications] K. Inaba: "ATP- dependent conformational changes of dynein: Evidence for changes in the interaction of dynein heavy chain with the intermediate chain 1" J. Biochem.117. 903-907 (1995)
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[Publications] B. C. Corazon: "Vitellogenins of Oreochromis niloticus: Identification, isolation and biochemical and immunological characterization" J. Exp. Zool.273. 59-69 (1995)
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[Publications] K. Inaba: "Identification of tubulins associated with the 950 kDa protease from salmon sperm" Biomed. Res.17 (in press). (1996)
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[Publications] 稲葉一男: "鞭毛運動におけるプロテアーゼの役割" 比較生理生化学. 12. 251-259 (1995)
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[Publications] 稲葉一男: "プロテアソームによる精子鞭毛運動の制御" 生物物理. 37(印刷中). (1996)