1995 Fiscal Year Annual Research Report
ランダムメディア上の情報伝播問題に関する基礎的考察
Project/Area Number |
07750082
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田中 泰明 京都大学, 工学研究科, 助手 (90217068)
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Keywords | 確率場 / 確率微分方程式 / 情報量 / シミュレーション / 耐震信頼性 |
Research Abstract |
本研究では、対象量(オブシェクト、一般に物理量とは限らない)の伝播媒体(メディア)の有する空間的な不規則変動特性を確率場によって数学的にモデル化し、メディア上のオブジェクトの時間・空間変動を記述する確率微分方程式に対する基礎的な考察、および本モデルの工学上の諸問題への適用可能性についての考察を行った。本研究を通じて得られた主な結果は以下の通りである。 1.ランダムメディア上のオブジェクトの変動を記述する方程式としては、(a)特殊な形の確率常微分方程式、(b)非因果的境界条件が付加される確率偏微分方程式、の2種類が考えられることをまず明らかとした。本研究では、タイプ(b)の解を通常の因果的な確率微分方程式の解を基に構築する手法を新たに提案した。 2.この手法を、確率場を係数関数として持つStrum-Liouville型境界値問題に適用し、その有効性を確認すると共に、実用面への応用を考慮して解析的な近似解を与える簡易手法を構築し、計算機シミュレーションを通じてその近似精度が良好であることを検証した。また、高層建築物中の地震波によるせん断波の不規則伝播問題への応用を試みた。 3.考察の対象となるオブシェクトを抽象的に定式化できる点に着目し、地震波の伝播、構造物の耐震応答、経済市場における投資情報の空間伝播など種々の実用的問題に理論的に応用し得ることを明らかとした。 4.オブジェクトに関する不確実位を広い意味での情報と考えることにより、上述のタイプ(b)確率偏微分方程式の解の構成が論理的な矛盾を含まないことを明らかとした。なお、このような情報はShannonの提唱した情報とは別個のものとして取り扱うべきものと考えられる。
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