1995 Fiscal Year Annual Research Report
電気化学堆積法によるCdS薄膜の物性評価と光電子素子への応用
Project/Area Number |
07750352
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Research Institution | Nagoya Institute of Technology |
Principal Investigator |
市村 正也 名古屋工業大学, 共同研究センター, 助教授 (30203110)
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Keywords | 電気化学堆積 / ラマン分光 / フォトルミネッセンス / 硫化カドミウム / 光伝導 |
Research Abstract |
電気化学堆積法により硫化カドミウム(CdS)を堆積し、主として光学的手法により特性を評価した。さらに熱処理を施して特性の変化を観察した。堆積源には硫酸カドミウムとチオ硫酸カドミウムを用い、硫酸でpH値を約2に調整した。基板にはネサガラスを用いた。堆積膜のラマン分光測定ではCdSのピークが観測されるものの、色は褐色で、X線回折などから元素状のCd、Sが存在していることが判明した。窒素雰囲気中で300℃で熱処理を施すことにより、CdとSは結合し、膜の光学的性質はほぼCdSのそれになる。まずラマン散乱ピークは強度の増加、半値幅の減少を示す。色は黄緑になり、CdSの禁制帯幅である約500nmより長波長の光に対する透過率が増す。また、単結晶CdSとほぼ同じ波長にフォトルミネッセンスのピークが現れる。これらの結果のうち、特にラマン散乱とフォトルミネッセンスは従来電気化学堆積CdSに対する報告例がなく、貴重な先例となった。熱処理温度をさらに上げると、ラマン分光測定からは結晶性のさらなる向上が観測されたが、フォトルミネッセンス測定からは点欠陥の増加を示唆する結果が得られた。このように、高温熱処理は、長距離秩序性を増すためにはよいが、点欠陥密度という点では悪影響を及ぼすことがわかった。なお、堆積膜の電気的特性を特定したところ、堆積直後では金属的な性質であったが、熱処理後は半導体的性質が現われた。しかし光伝導度は現在のところ光電変換素子としては不十分であり、今後さらに堆積条件、熱処理条件の最適化を図る必要がある。
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