1995 Fiscal Year Annual Research Report
好気性微生物によるコンクリート劣化に及ぼす微生物活性の影響
Project/Area Number |
07750548
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
河合 研至 広島大学, 工学部, 助教授 (90224716)
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Keywords | コンクリート / 劣化 / 好気性微生物 / 代謝産物 / 代謝量 / 炭酸 / 有機酸 |
Research Abstract |
本研究では,環境温度の相違により微生物活動の活発さを変化させ,それによって代謝産物である炭酸や有機酸の排出量を変化させることにより,好気性微生物によって引き起こされるコンクリート劣化に及ぼす微生物活性の影響について検討を行った。好気性微生物としてBacillus subtilis(枯草菌)を使用し,環境温度は37℃(最適生育温度),28℃ならびに20℃とした。各環境温度においてBacillus subtlisの増殖曲線を作成したところ,それぞれの対数増殖期(微生物の活動が最も盛んな時期)における直線の傾きが異なり,これらの温度設定により微生物活動の活発さを変化させることが出来ることが確認された。また,劣化シミュレーション実験では,培養液内にセメントペースト供試体を浸漬し,さらに微生物を接種して,培養液の組成変化ならびに供試体表層部の組成変化について検討を行った。有機酸の分析結果より,Bacillus subtilisの代謝産物としてn-酪酸が確認され,n-酪酸の排出量は最適生育温度に近いほど培養初期から大きく,環境温度の相違により微生物の代謝量が異なることが確認された。ただし,培養開始16日目には,37℃及び28℃における培養液中のn-酪酸濃度がすでに減少傾向となったのに対して,20℃においては37℃の培養初期に匹敵するn-酪酸の排出が認められた。また,セメントペーストからのカルシウムの溶出に関しては,37℃にて培養を行った場合が最も早く,次いで28℃,20℃であったが,n-酪酸の排出量と同様に20℃にて培養を行った際のカルシウム溶出量は培養日数の経過とともに高くなり,32日までの培養期間を通しては,いずれの環境温度において行った劣化シミュレーション実験においても,セメントペーストの劣化は同程度であった。このことから,環境温度の相違により微生物活動の活発さが変化し,微生物より代謝される有機酸や炭酸の代謝量が異なっても,ある濃度以上の有機酸ならびに炭酸が排出されていれば,コンクリート劣化の程度にはほとんど影響はなく劣化が進行することが明らかとなった。
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Research Products
(2 results)