1995 Fiscal Year Annual Research Report
開発留保の便益を考慮した開発戦略決定ルールに関する研究
Project/Area Number |
07750626
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
多々納 裕一 鳥取大学, 工学部, 助教授 (20207038)
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Keywords | 開発 / 保全 / 不可逆性 / 意思決定の留保 / 環境 / 無限期間意思決定問題 / 信念 / 情報構造 |
Research Abstract |
開発プロジェクトを実施するか否かの意志決定を行う際には、現時点でプロジェクトを実施することによって生じる純便益の現在価値に基づいて意志決定を行うというアプローチがなされてきた。ここで、純便益の現在価値は、プロジェクトが実施された場合の各期の行為を事前に定めた上で、現時点から計画期末までの各期の便益と費用のフローを現在価値に換算し、求められた便益と費用の差として算定される。この際、各期の費用には機会費用が含められる。従って、開発によって生じる静的な機会費用はそれが適切に計量化されれば、このような伝統的なアプローチにおいても考慮されうる。一方、上述した開発留保の便益は、将来時点において意志決定がやり直しうることを前提として定義される。ところが、伝統的アプローチでは、将来時点における意志決定の変更を考慮していないために、上述のような開発留保の便益は開発によって生じる機会費用として考慮されていない。しかしながら、将来時点における意志決定の変更可能性をみとめれば、開発留保の便益は、開発による機会費用として考慮されるべきである。 本研究では、現時点において開発を行うか、開発を留保するかという意志決定問題に直面する危険中立的な行政主体を想定し、将来時点における意志決定の変更の可能性を考慮した意志決定ルールに関して考察した。具体的には、まず、開発留保の便益を開発留保が選択の多様性、情報の利用可能性を保証することの価値、すなわち、「多様性価値」と「情報価値」との和として定義した。次いで、開発の機会費用として開発留保の便益を考慮した純便益の現在価値を算定する方法を示した。さらに、このようにして修正された純便益の現在価値に基づく現在時点の意志決定がベイズ意志決定ルールに基づく意志決定に一致することを示した。
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