1995 Fiscal Year Annual Research Report
宮崎県における伝統的民家と公社形式住宅の温熱環境の実測調査とその性能の比較
Project/Area Number |
07750686
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Research Institution | Miyakonojo National College of Technology |
Principal Investigator |
小原 聡司 都城工業高等専門学校, 講師 (60214219)
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Keywords | 伝統的民家 / 夏季 / 温熱環境 / 実測 / 住宅供給公社 |
Research Abstract |
宮崎県南部の宮崎市と日南市において,築130年の伝統的民家(椎葉村の元農家「旧清田家」と飫肥の元武家屋敷「旧伊東家」)及び平成7年竣工の県住宅供給公社監理による標準仕様住宅(宮崎市の「H邸」と日南市の「Y邸」,共に天井断熱50mm)計4棟の夏季温熱環境を平成7年8月6日〜28日にかけて実測し,現代構法住宅と伝統的民家のパッシブクーリング時の温熱環境を比較した。測定内容は各室の空気温度と,屋根や床表面温度である。その結果,以下に示す4点の知見を得た。 1.公社標準仕様では午前中の通風を取らない方が,伝統的民家より外気温に対して低い居室空気温となった(H邸2階を除く)。 2.通風無しの公社仕様H邸2階では,終日外気温より4〜6℃高く,伝統的民家の温熱環境に劣った。しかし終日通風を行うと伝統的民家と同程度の温度差となった。 3.旧清田家では通風の有無の影響は小さく,密閉時は外気温+2℃程度であった。しかし旧伊東家では通風の有無の影響は大きく,密閉状態の夜間に約6℃外気温より高くなり,これはY邸より約2℃高かった。 4.居室空気温の日較差と外気温の日較差の比ΔT_1/ΔT_0は,各民家で全く傾向が異なり,伝統的民家及び公社標準仕様で特定の傾向は見られなかった。 以上のように現代構法に対する伝統的民家のパッシブ時の温熱環境面の利点は,今回の実測では明瞭ではなかった。しかし夏季の伝統的民家の利点は通風の良さと通気性のよい床から床下冷気の室への流入と考えられ,今回の実測のように室空気温のみで温熱環境を判断するのは早計であると考える。他の要素,例えば屋根面からの輻射や気流速も総合して,人間の体感温度に近い評価ができるグローブ温度や作用温度で再評価する必要があろう。また農家,武家屋敷各1棟では不十分であり,今後実測家屋を増やしたうえで評価を行う必要がある。
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Research Products
(1 results)