1995 Fiscal Year Annual Research Report
金属人工格子等の超微細構造に起因した異常力学物性の解明
Project/Area Number |
07750719
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Research Institution | Iwate University |
Principal Investigator |
山口 明 岩手大学, 工学部, 講師 (60242129)
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Keywords | 人工格子 / 多層膜 / 金属 / 力学物性 / 弾性率 / ブリルアン散乱 / レーリー波 / MEAM法 |
Research Abstract |
本課題では、金属人工格子の異常力学物性について、実験的、理論的な研究を行った。 金属人工格子の力学物性(弾性率、降伏応力、破壊応力、硬さ等)が複合則から予測される値に比べて異常に増加したり減少したりすることは古くから知られている。 実験的研究では、積層周期が8.8〜71ÅのAl/Ni金属人工格子を、高周波マグネトロンスパッタ法により多数作製し、ブリルアン散乱法を用いて、その表面弾性波(レーリー波)速度を測定した。その結果すべての膜について、レーリー波速度は複合則から予測される値よりも小さな値を示すこと、積層周期24Å付近で極小を示すことが明らかになった。 理論的研究では、MEAM(Modified Embedded Atom Method)法を用いてAg,Au,Cu,Ni,Pd,Ptの面心立法金属の組み合わせの金属人工格子の二軸弾性率を求めた。MEAM法は半経験的方法であり、自己無撞着に解く電子密度汎関数法に比べ計算量を大幅に節約できる近似的方法でありながら、実験値と非常に良く一致することが知られている。計算の結果、ほとんどの系で二軸弾性率は複合則から予測される値よりも小さな値を示すことがわかった。さらに、Ni/Pd等の系では、二軸弾性率の積層周期依存性は単調な変化とはならず、Ni 1原子層/Pd 1原子層やNi 3原子層/Pd 3原子層の人工格子での二軸弾性率の値よりもNi 2原子層/Pd 2原子層の人工格子の値が小さくなることがわかった。この結果は、既に報告されている実験によって得られた結果と良く一致している。 以上の結果を総合すると、人工格子の弾性率は複合則から予測される値よりも小さくなる傾向があること、積層周期によって大きく変化することが考えられる。既に報告されている弾性率が増大するという実験結果は膜構造の不完全性、基板の影響等が関係していると考えられる。
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