1995 Fiscal Year Annual Research Report
液晶ディスプレーを用いた光学画像処理装置を応用した固液界面の高分解能電顕観察
Project/Area Number |
07750749
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐々木 勝寛 名古屋大学, 工学部, 助手 (00211938)
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Keywords | 高分解能電子顕微鏡法 / 光学フーリエ変換 / 液晶ディスプレイ / 固液界面の原子構造 |
Research Abstract |
固液界面の原子構造を直接的に観察するには、高分解能電子顕微鏡法が最も有力な方法であるが、この方法では目的の試料がマトリックス中に埋め込まれていると、目的物質の結晶格子像とマトリックスの結晶格子像が重なって観察されてしまう。そこで、得られた高分解能像をフーリエ変換し、不要な物質の逆格子点を取り除き、逆フーリエ変換するという方法がある。これまでこの方法は、デジタルコンピュータを用いて行われてきたが、その場観察に必要な変換速度が得られなかった。これに対して光学変換を用いて行う方法があり、近年の液晶ディスプレイデバイス(LCD)の発展により非常に安価な装置を用いて同等の機能が構成できる可能性が出てきた。この方法の優れた点は、画像の処理にほとんど時間を必要とせずその場観察に応用できる点である。 本研究ではLCDを用いて光学変換機能を持つシステムを開発した。その結果 (1)LCDを用いて、高分解能電子顕微鏡像のフーリエ変換を行うことに成功した。 (2)そのフーリエ変換像を逆フーリエ変換して、実空間像に戻すことに成功した。これにより、高分解能電子顕微鏡像のその場フーリエ変換と、それに操作を加えて実空間像に戻すために必要な技術的開発が完成した。しかし、開発過程で様々な問題点が明らかになった。 光学変換像は、光学系の球面収差等に敏感で、これらの影響が大きく出てしまい、十分な解像度が得られなかった。また、光学系を支える、専用のフレームを用いなかったので、軸ずれによる光学系の非点収差が拡大してしまった。市販されている高密度、多画素LCDすべて、カラー用のもので単色光であるレーザー光を用いると、実効画素数が3分の1に減ってしまい、十分な回折角が得にくいことがわかった。 これらの問題点は、予算が当初申請額の3分の2に圧縮されたので、当初計画していた部品を購入することが出来ず、すべて1ランク下の部品を用いなければなかったことに起因している。このため、光学レンズはジャンク部品を用いねばならず、光学系を支える、専用のフレームを作成するだけの予算がなかった。その結果、当初設計の性能には至らなかった。しかし、今回用いた部品は、すべて安価な家庭用日用品であり、この程度の部品で基礎実験として十分な成果が得られた。それぞれに関して、専用の部品を調達することが出来れば、実用的な性能を発揮する装置を作ることが出来ることが実証された。
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