1995 Fiscal Year Annual Research Report
モリブデンの室温脆化に関する侵入型不純物元素の電子構造計算
Project/Area Number |
07750783
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
古井 光明 名古屋大学, 工学部, 助手 (90262972)
|
Keywords | モリブデン / 室温脆性 / 侵入型不純物元素 / DV-Xaクラスター法 |
Research Abstract |
BCCクラスターの中心に侵入型不純物元素(水素,ボロン,炭素,窒素,酸素)を置換した分子軌道計算によって、結合次数,イオン性,電子密度,レベル構造およびオーバーラップポピュレーションなどのパラメーターを得た。その結果、モリブデンと不純物元素の共有結合の大きさを表す結合次数は、ボロンが最も大きく、次いで炭素,窒素,酸素,水素の順になった。つまり、モリブデンの粒界破壊を抑制する元素であるボロンや炭素は、いずれも結合次数が大きい元素であることがわかった。また、不純物元素の第一近接位置にあるモリブデン間の距離を変えて、八面体格子を膨張させた計算を行った。20%の格子膨張によって、モリブデンと不純物元素の結合は回復することがわかった。差電子密度分布から、ボロンや炭素のような不純物元素は、第一および第二近接モリブデン原子いずれとも強い結合を形成していることがわかった。また、各不純物元素のイオン価をそれが100%イオン的になったときの価数で割った値より、各元素のイオン性が推定できることを示した。すなわち水素が最もイオン結合的であり、次いで酸素,窒素,炭素,ボロンの順となった。また、各不純物元素の化学結合は、二成分系化合物の化学結合の性質にも直接反映していることがわかった。つまり、共有結合性の強いMo_2Bからイオン結合性の強いMoO_2へ変化する。 3d遷移金属を系統的に添加したモリブデン二元系合金を用いた三点曲げ試験によって、室温脆性を評価した。レニウムおよびタングステンを添加したモリブデン合金において、高い曲げ延性を示した。なお、それらの破面形態は粒界破壊が支配的であった。従って、モリブデンとの高い結合性を有することが理論計算により示された、ボロンおよび炭素を添加して粒界を強化した合金の曲げ試験を行った。その結果、これらの元素は粒界に偏析して有害な酸素との化合物を形成してはいるものの、曲げ延性の向上にはつながらなかった。このことは、モリブデンのように粒界から優先的に破壊する材料をシミュレートするためには、粒界を考慮した電子構造計算が必要であることを示唆しているのかもしれない。一方、比較のためにチタンを添加した合金において、明瞭な曲げ延性の増加が確認されている。
|