1995 Fiscal Year Annual Research Report
高分子膜の不純物除去促進を目的とした多成分溶液の乾燥機構解析
Project/Area Number |
07750828
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Research Institution | University of Toyama |
Principal Investigator |
吉田 正道 富山大学, 工学部, 助教授 (70230761)
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Keywords | 高分子膜 / 乾燥 / 不純物除去 / 乾燥選択性 |
Research Abstract |
高分子溶液の塗布・乾燥による薄膜製造プロセスにおける残留不純物濃度の低減と不純物除去の促進を図る目的で,多成分溶媒を含む高分子溶液の熱風乾燥に関し実験的研究を行なった.溶質はポリスチレン,溶媒はトルエン-エチルベンゼン(蒸気圧差小)あるいはメチルエチルケトン-エチルベンゼン(蒸気圧差大)の2成分混合物である.この様な3成分溶液の乾燥に対して溶液質量および各成分の平均組成の時間変化を測定した.得られた結果の要約を以下に示す. 1.乾燥速度 初期の乾燥速度はガス境膜内物質移動抵抗に支配され,溶液の呈する蒸気圧が高いほど乾燥速度も高い.しかし揮発成分の表面濃度が平衡値に達すると液膜内の拡散抵抗が乾燥速度を支配するようになる.この期間の乾燥速度と初期組成の間に相関は見られない.従って,初期の蒸気圧が高いほど乾燥所要時間が短いとは限らず,溶媒添加により乾燥時間の短縮化を行なえる可能性がある. 溶媒の蒸気圧差が大きい場合,低沸点成分に高沸点成分を僅かに加えただけで乾燥速度は大きく増加する.しかし拡散抵抗が支配する期間になると溶媒添加の効果は消失し,乾燥速度は低沸点成分のみの場合とほぼ等しくなる. 2.乾燥の選択性 初期組成によらず,常に高揮発成分(蒸気圧の高い成分)が選択的に除去される.境膜抵抗支配期間における高揮発成分の選択性は高分子を含まない溶液の蒸発の場合とほぼ一致する.一方内部抵抗支配期間のそれは蒸発の場合よりも低下しており,低揮発成分の残存量が少なくなる傾向にある.これは乾燥の場合液膜内部の溶質拡散による影響が無視できないためであり,乾燥の選択性を予測し不要成分の残存量制御等に応用する際は液膜内の物質移動機構を検討する必要がある.
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