1995 Fiscal Year Annual Research Report
温帯森林流域の水質形成におよぼす生物化学的・地球化学的要因の定量的評価
Project/Area Number |
07760153
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
大手 信人 京都大学, 農学部, 講師 (10233199)
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Keywords | 森林流域 / 水質形成 / pH / 土壌CO_2 / カチオン / 化学的風化 / SiO_2 |
Research Abstract |
森林流域の水循環過程における水質の変化過程に生物化学的要因と地球化学的要因がどのように影響しているかを定量的評価することを目的とし、pHの形成のメカニズムに焦点をあてて現地観測を行った。また、このメカニズムをとおして各成分間の相互作用を考慮するモデル化を試みた。 この結果、以下のことが明らかになった。1)表層土壌(A,B層)では、降雨や有機物の分解で供給される、SO_4^<2->,NO_3^-等の強酸がイオン交換基からリリースされるCa^<2+>,Mg^<2+>等によって緩衝され、プロトンはトラップされる。それ以下の層(C層)では、主たるプロトンの供給は、土壌ガス中のCO_2が溶解することによって生じる重炭酸による。これに対するカウンターカチオンは、主としてNa^+であり、このイオンの濃度形成は、SiO_2の溶解と密接に関係していることが明らかになった。下層ではこの影響でアルカリ度が十分に上昇しているので、pHの決定には溶存態のCO_2が強く影響することが明らかになった。この成果は、Water Resources Research Vol. 31において公表した。2)土壌CO_2濃度のプロファイル観測結果をもとに、土壌CO_2環境と地下水の溶存CO_2分圧の変動に影響を与えている要因を整理した。この結果、土壌CO_2濃度は、地温と土壌水分に影響される土壌中の生物活性にコントロールされ、ソースは上層に偏っていることがわかった。また、飽和帯地下水の溶存CO_2濃度は、その直上の土壌CO_2の濃度ばかりでなく、地下水の流動と混合の影響を受けて形成されることが示唆された。この成果は、1995年水文・水資源学会において発表し、日本林学会誌に投稿中である。3)観測・解析結果をもとに土壌層中の一次元のpH値形成モデルの構築を試みた。このモデルを用いて、観測結果の再現を試み、基底流出時の渓流水・地下水のpHをシミュレートすることができた。
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[Publications] Ohte, N. et al.: "Biogeochemical influences on the determination of water chemistry in temperate forget basin: factors determining the pH value" Water Resources Research. 31. 2823-2834 (1995)
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[Publications] Ohte, N.: "Multi-dimensional parameter estimation of the integrated Alpine Hydro-Chemical model using Monte-Carlo simulation" IAHS publication. 228. 175-183 (1995)
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[Publications] 恩田 裕一: "水文地形学" 古今書院, (1995)