1995 Fiscal Year Annual Research Report
核磁気共鳴法(NMR)による生体構成成分と凍害保護物質の相互作用の解析法の開発
Project/Area Number |
07760266
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉本 実紀 京都大学, 農学部, 助手 (20243074)
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Keywords | 凍害保護物質 / 凍結保存 / 低温保存 / NMR / MRI / dimethylsulfoxide |
Research Abstract |
生体組織内における凍害保護物質の影響について検討するために、凍害保護物質の一種であるジメチルスルフォキシド(DMSO)、水、ならびに結合組織中の代表的な蛋白質であるゼラチンからなるファントムを作製し、核磁気共鳴画像を9.4Tの静磁場中(1H核共鳴周波数400MHz)でスピンエコー法により撮影した。得られた画像上(2cmX2cm、256X256ピクセル)において、ファントム中の直径2-3mmのガラス管は明瞭に描出され、その中に含まれたスポンジ状のゼラチンがエコー時間の延長に伴い低信号の網目状の構造として観察された。水、DMSO、ならびにそれらの等量混合物(50%DMSO)における1H密度の比を画像の信号強度より推定すると、1:0.79:0.90となり、理論的に計算される水とDMSOの1H密度の比1:0.76とほぼ同様の数値が得られた。また、繰り返し時間およびエコー時間を変化させた画像群より画面上の各部分における縦緩和時間(T1)および横緩和時間(T2)を計算した。T1は水が最も長くDMSOが水に比べてやや短かった(0.8-0.9倍)が、50%DMSOでは著しく短縮し(水の1/2以下)水とDMSOの1H間の強い相互作用が推察された。断面像のy軸への投影像と化学シフトを表す化学シフトイメージング像で水、DMSO、50%DMSO中の水およびDMSOのT1を分離して推定したところ、50%DMSO中では水とDMSOの両方のT1が短縮する傾向が認められた。凍害保護物質の氷晶形成抑止能力は水の1Hに対する影響によるとの報告があり、T1強調像もしくは相互作用をより強調する交差緩和時間強調像の観察により凍害保護物質の氷晶形成抑止効果を組織内で観察できるものと考えられる。ゼラチンが存在する場合、50%DMSOにおけるT1の短縮は認められなかった。T2はDMSOで水に比べて長く(1.5-2倍)50%DMSOはそれらの中間になった。ゼラチンが存在する場合、いずれの溶液においてもT2は著しく短縮し、溶液間で著しい差は観察されず、水と同様にDMSO分子もゼラチンと結合し運動が制限されることが推察された。以上より、生体組織内における凍害保護物質の作用を観察するためには、交差緩和存在下でT2強調のためのマルチエコー法により撮像を行うことが効果的であると考えられる。現在、この目的のためのパルス系列を作成中である。
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