1995 Fiscal Year Annual Research Report
甲状腺分化癌の発生に関する分子病理学的検討-ras,trk,met oncogeneに焦点を絞って
Project/Area Number |
07770119
|
Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
小山 徹也 群馬大学, 医学部, 講師 (50233622)
|
Keywords | 甲状腺 / 分化癌 / N-ras / C-met |
Research Abstract |
【はじめに】甲状腺分化癌に関する癌関連遺伝子,増殖因子の検討はすくない.ras oncogeneのpoint mutationに関しては,特に濾胞型腫瘍でいくつかの報告がある(Lemoineらoncogene 1989 4 :159-164).乳頭癌に関してはret,trk,metの発現に関して報告がある(Griecoら cell 1990 60 : 557-563, Renzoらoncogene 1992 7 : 2549-2553).今回甲状腺分化癌を中心にrasのmutationとmetのexpressionについて検討した. 【材料と方法】甲状腺外科的手術材料を用いて検討した.rasのpoint mutationについては,ホルマリン固定パラフィン包埋ブロックからDNAを抽出しPCR-SSCP法で検討し,cycle sequence法でsequenceした.C-met/HGF receptorについては,新鮮材料から蛋白を抽出しwestern blottingで検索した.またホルマリン固定パラフィン包埋切片を用いて免疫染色した. 【結果と考察】33例の甲状腺組織について,K-ras codon 12,13及びN-ras codon 61におけるpoint mutationについて検討した結果,K-rasで3%(1/33), N-rasで18%(6/33)検出された.N-rasのcodon 61のmutationはfollicular adenomaで17%(2/12),follicular carcinomaで50%(3/6)認められ,papillary carcinomaで検出されなかった(0/11).38例の甲状腺腫瘍についてC-metの発現についてWestern blotting法で検索すると,乳頭癌21例中14例(67%)にC-metの発現があり,腺腫様甲状腺腫は8例中1例(13%)のみ,濾胞腺腫では9例中全例陰性であった.免疫染色では周囲に浸潤,増殖する細胞内に強い陽性所見が見られた.甲状腺濾胞型腫瘍発生におけるN-ras mutationの関与が,また甲状腺乳頭癌の発生,進展におけるC-met発現の関与が示唆された.
|