1995 Fiscal Year Annual Research Report
同位体希釈プラズマ質量分析法による生体試料中微量元素の精密分析
Project/Area Number |
07770266
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Research Institution | National Institute for Environmental Studies |
Principal Investigator |
吉永 淳 国立環境研究所, 化学環境部, 研究員 (70222396)
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Keywords | ICP-MS / MIP-MS / 生体試料 / 同位体希釈分析 / セレン / 水銀 / 鉛 / カドミウム |
Research Abstract |
プラズマイオン源質量分析法を用いた安定同位体希釈分析による、生体試料中微量元素の高精度・高確度分析手法の確立を行った。用いた装置は誘導結合アルゴンプラズマ質量分析装置(ICP-MS)、マイクロ波誘導窒素プラズマ質量分析装置(MIP-MS)である。試料としては微量元素濃度が既知の頭髪・血清・尿・臓器などの標準試料を用い、測定元素はICP-MSの場合、水銀・亜鉛・カドミウム・鉛、MIP-MSの場合はセレンである。それぞれの元素について、安定同位体組成を人工的に変えた安定同位体スパイクを購入し、硝酸に溶解してスパイク標準液を作製した。試料をテフロン製バイアル(7ml容)に適当量(固体試料の場合50-100mg、血清・尿の場合1ml)採取して精秤し、スパイク標準液を適当量添加してから、テフロン2重容器分解法により分解した。測定元素濃度が10-20ppbになるように希釈し(MIP-MSの場合100ppb)、亜鉛(68/66)、セレン(80/78)、カドミウム(114/112)、水銀(202/200)、および鉛(208/206)の安定同位体比を測定した。ICP-MS、MIP-MSによる同位体比測定精度はどの元素についてもおおむね0.2-0.5%であった。標準試料の分析結果は、どの元素についても保証値とよく一致したばかりでなく、平行分析の精度は1%以下であり、本分析法がきわめて高精度かつ高確度であることが判明した。一方で、高い濃度のイオウやケイ素をふくむ試料の場合、亜鉛、セレンなどにスペクトル干渉があり、精度の良い結果が得られないことも判明した。この場合、キレート抽出などによる干渉元素からの分離が必須であった。本法は、これまで安定同位体希釈分析が困難であったセレン・水銀などにも適用でき、しかも操作が簡便であるという点で、実用的価値の高い方法であると結論できる。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] J. YOSHINAGA et al.: "ISOTOPE DILUTION ANALYSIS OF SELENIUM IN BIOLOGICAL MATERIALS BY NITROGEN MICROWAVE-INDUCED PLASMA MASS SPECTROMETRY" ANALYTICAL CHEMISTRY. 67. 1568-1574 (1995)
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[Publications] 吉永 淳: "プラズマイオン源質量分析法によるヒト試料の微量元素分析" 分析化学. 44. 895-903 (1995)