1995 Fiscal Year Annual Research Report
STR多型の型判定に悪影響を及ぼす因子に関する実験的研究
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07770310
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
黒崎 久仁彦 千葉大学, 医学部, 講師 (60240701)
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Keywords | STR(Short Tandem Repeat)多型 / PCR(Polymerase Chain Reaction)プライマー / PLA2 / ポリアクリルアミドゲル / 塩基組成 / 泳動度 / 塩基欠失 |
Research Abstract |
本研究の目的は、STR多型の正確な型判定に悪影響を及ぼす因子について、その成因・出現傾向について検討することにより、STR多型を法医実務に応用するための基礎固めをすることにある。この方針に基づいて研究を行い、以下のような新しい知見を得た。 1、PLA2座位におけるSTR近傍領域の3塩基欠失 基本単位3塩基対のSTRを有するPLA2座位において、既にコーカソイド集団で報告されているPCRプライマーを用いて、日本人集団内におけるアリル頻度を算出した。また、この座位についてプライマーの位置を当初設定されたものより外側に再設定してPCRを行ったところ、当初ホモ接合と考えられた2個体について新しいアリルが出現し、これらが実はヘテロ接合の個体であることが明らかになった。この事象の成因について検討したところ、当初増幅されなかったアリルにおいては、設定されたプライマーの3'末端に一致する部位に3塩基の欠失があることが確認された。この結果、単一アリルしか検出されない場合でも、ホモ接合の個体とは限らないことを認識する必要性が示唆された。 2、変性ポリアクリルアミドゲルにおける一本鎖DNAの泳動度と塩基組成との関係 STR多型の検出において、同一アリルであるにもかかわらず、各相補鎖をそれぞれ別個に放射性標識し変性ポリアクリルアミドゲルで泳動すると、1〜3塩基相当の範囲で泳動度に"ずれ"が生じることが明らかになった。この"ずれ"と各相補鎖を構成する塩基成分との関係について検討したところ、各相補鎖におけるアデニン及びシトシン塩基の総数と泳動距離との間に正の相関関係が認められた。このような"ずれ"の存在は、標識される鎖の違いによりアリルを誤判定する可能性があることを示唆しており、STR多型を法医学的に応用する上で検出方法の統一及び詳細な記載の重要性を再認識させるものである。
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[Publications] K.Kurosaki, H.Oota, H.Saitoh, M.Kiuchi, S.Ueda: "Sequence variation found in the flanking region of a trimeric short tandem repeat at the PLA2 locus: its considerable effect on estimating alleles.21GC01:Jpn. J.Legal Med." 50. 1-5 (1996)