1995 Fiscal Year Annual Research Report
アトピー性皮膚炎の病態における高親和性IgE受容体(FceR1)の関与とサイトカインネットワーク
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07770700
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
川本 知江 順天堂大学, 医学部, 助手 (70224863)
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Keywords | FceRI / IgE / アトピー性皮膚炎 |
Research Abstract |
新しいELISA法によるIgEの測定 はじめに:アトピー性皮膚炎(AD)の病態生理学的背景として、角層のバリヤ-機能異常や免疫学的異常の関与が想定されている。ADでは、T細胞の関与するIV型アレルギーの他に、IgEによって惹起されるI型アレルギーもたしかにその臨床病状の形成の一翼を担っており、AD増悪の一因となっている。I型アレルギーは、肥満細胞や好塩基球上のIgEレセプターにIgEが結合し、そのIgEが多価抗原により架橋されることによって始動する。すなわち高親和性IgEレセプター(FcεRI)と実際に結合しうるIgEがその反応を始動しているはずであり、FcεRI-結合性のIgEを測定することが臨床的に重要であると思われる。 方法:ヒト血清中のIgEを、組み換え型のヒト高親和性IgEレセプターα鎖細胞外ドメイン(solubleα)を用いたsolubleα-ELISA(FcεRIα鎖に結合しうるIgE)と従来のサンドイッチ-ELISA(血清中の総IgE)にて測定し、アトピー性皮膚炎における種々の臨床的パラメーターとの相関を検討した。対象はアトピー性皮膚炎(AD)患者84名、正常人25名である。 結果:1. solubleα-ELISAによるIgEの測定値:FcεRI-結合性IgEは、AD患者において有意に増加していた(p<0.01)。2. AD患者においては、solubleα-ELISAにて測定した血清FcεRI-結合性IgE値のサンドイッチ-ELISAにて測定した総IgE値に対する割合(FcεRI-結合性IgE/総IgE)は有意に低値であった(p<0.01)。3. 臨床的パラメーターではADの重症度スコアならびに好酸球数とFcεRI-結合性IgE値との間に相関が認められた。 考察:AD患者血清中のIgE分子にはFcεRIに結合し得ない種類の分子の存在、あるいは抗IgE抗体や抗FcεRI抗体など、IgEのレセプターへの結合を阻害する因子の存在が示唆され、現在解析中である。FcεRI-結合性IgEの絶対値は、一つのグループで、ADが重症になるほど増加しており、このグループのADの重症度を反映することが示唆された。
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