1995 Fiscal Year Annual Research Report
全身性エリテマトーデスにおける脳^1H-MRSの検討
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07770774
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
野田 慎吾 千葉大学, 医学部・附属病院・文部教室助手 (80261923)
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Keywords | SLE / proton MRS / brain / NAA |
Research Abstract |
今回我々は、proton MR spectroscopy(^1H-MRS)を用い、頭部MRIにて異常所見を認めない全身性エリテマトーデス(SLE)患者の前頭葉における神経細胞活動性を検討した。 対象は当院内科に入院中で頭部MRIにて異常所見を認めないSLE患者13例(平均年齢33.1±12.2歳)および健常者4例(平均年齢32.4±12.4歳)である。精神症状を認めたSLE患者は5例であった。^1H-MRSについては全例にインフォームドコンセントを得た。 ^1H-MRSは1.5TのMR装置を用い、single voxel PRESS法(TR=2000ms、TE=136ms)により得た。左右前頭部に8cm^3の関心領域を設定し、得られたスペクトルより、N-acetylaspartate(NAA)、Choline含有物質(Cho)、Creatine+Phosphocreatine(Cr)の各ピーク面積を得た。SLE患者および正常対照間で左右前頭葉のNAA/Cr比を比較検討した。 結果としては、右前頭部におけるSLE患者群のNAA/Crの平均(1.27±0.15)は有意に(p<0.05)正常対照群(1.53±0.15)より低かった。SLE患者ごとの左右前頭部間でのNAA/Crの差を求めそれを比較したところ、精神症状のあるSLE患者群(0.40±0.23)では精神症状のないSLE患者群(0.20±0.08)より有意に(p<0.05)その差は大きかった。精神症状のあるSLE患者5例中4例では右前頭部におけるNAA/Crが左前頭部より低かった。 SLE患者の右前頭部でNAA/Crの低下が認められたが、これはこの領域での神経細胞活動性が低下している可能性を示している。最近のPET研究において右前頭葉は注意の持続に関与している可能性が示されていること、SLE患者では注意集中障害があるとの報告があることから、NAA/Crの低下で示される右前頭部での神経細胞活動性の低下はSLE患者の注意障害に関連していると考えられる。 精神症状のあるSLE群でNAA/Crの前頭部における左右差が、精神症状のない群より有意に大きかった。このことから、SLE患者においては前頭葉における神経細胞活動性の左右差が大きいほど精神症状が発現しやすくなるという可能性が考えられる。
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