1995 Fiscal Year Annual Research Report
何が痴呆患者の家庭介護を困難にするのか?-介護者の負担と期待について-
Project/Area Number |
07770815
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute of Gerontology |
Principal Investigator |
浅川 理 (財)東京都老人総合研究所, 精神医学部門, 研究員 (70260304)
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Keywords | 痴呆 / 家庭介護 / ストレス / 医療サービス |
Research Abstract |
(目的)痴呆患者の介護者における介護負担と医療機関へのニーズの実態を明らかにする。 (対象・方法)東京都老人医療センター痴呆専門外来を、平成7年9月から平成8年2月までに受診した患者とその介護者のうち、精神科医が診察した28例を対象とした。患者背景、長谷川式知能スケール(改)(HDS-R)、問題行動評価尺度(TBS)、N式日常生活動作能力評価尺度(N-ADL)、および介護者における受診理由、介護負担度、受診後の負担感の変化、満足度、自己評価抑うつスケール(SDS)などについてアンケート調査を行った。 (結果・考察)受診理由は、診断確定35.4%、痴呆自体の治療31.3%で、精神症状などの問題行動の治療や応対方法の指導29.2%であった。介護負担度は、限界および負担ながらも家庭介護継続可能60.7%、十分家庭介護に余裕あり32.1%であった。診察後の負担感の変化は、減ったものが57.0%であったが、かえって増したものも7.1%であった。外来での診察・説明で、満足できたもの71.3%だったが、不満足としたものも28.5%であった。不満の理由には、患者診察のみで家族の悩みを聞いてもらえなかった、進行の見通しや具体的な応対方法についての説明がほしかった、診断が確定してかえって絶望感が増した、などがあった。介護負担度別にHDS-R、TBS、N-ADL、SDSを比較したところ、介護負担が高い群でHDS-R、N-ADLの点が低く、TBSの点が高かった。また、介護負担が高い群でSDSの点が高く、介護者に抑うつ傾向が強く現れていることもわかった。以上から、負担感の強い介護者のニーズは、診断や痴呆に対する治療以上に、精神症状の治療や具体的な応対方法の指導・心理的サポートであることが示唆された。今後さらに例数を増やし、適切な治療的アプローチを検討していく必要がある。
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