1995 Fiscal Year Annual Research Report
ヒトの主要組織適合抗原はループス腎炎の組織型を規定する因子になるかどうか?
Project/Area Number |
07770913
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Research Institution | Fukuoka University |
Principal Investigator |
小河原 悟 福岡大学, 医学部, 講師 (40233407)
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Keywords | SLE / HLA / ループス腎炎 / 疾患感受性遺伝子 / DRB1*1501 |
Research Abstract |
【背景】全身性エリテマトーデス(SLE)は家族発生例や一卵性双子児における発症率がニ卵生双子児のそれと比較して高いことが報告されており、遺伝要因の関与が考えられる。HLAはヒトの免疫応答を遺伝的に決定する重要な遺伝子であり、遺伝的多型を示す。SLEとHLAとの相関については、既に白人や黒人ではHLA-B8,DR2,DR3との相関が報告されているが、日本人についてもDR2との相関が報告され、遺伝子レベルの解析では、DRB1^*1501-DQA1^*0102-DQB1^*0602との相関が報告されているが、相対危険度は2〜3程度であり、強い相関はない。一方SLEは諸臓器に病変がおよぶが、特に腎臓はループス腎炎として高率に発症する。特に腎不全になるとSLEの生命予後を決める重要な因子であり、尿所見、腎機能低下が存在する場合は腎生検を行い、病理組織所見により、治療方針や予後を判定する。現在病理所見はWHOにより大きく分けてI型からVI型まで分離される。各型で予後は異なり、また治療や進行度により各型へ移行するのが特徴である。V型は他の型よりも蛋白尿が多く、ネフローゼ症候群をともなうことが多く、治療に抵抗するが、II,III,IV,VI型よりも腎の予後は良い。しかも他型への降行は少ない。このように糸球体基底膜を中心に免疫複合体が沈着するV型と、メサンギウムを中心に沈着するII,III,IV,VI型と発症要因や宿主の背景が異なることが考えられる。 【目的】ループス腎炎はWHOの組織型でみると主にメサンギウム領域に免疫複合体が沈着するII,III,IV型と主に基底膜上皮下に沈着するV型がある。各型により病態や予後が異なり、宿主要因の関与が示唆されるため、HLA抗原頻度を各組織型で比較した。 【対象と方法】SLEの診断基準を満たし、腎生検を行った57例を対象にWHO組織分類を行い、II,III,IV型をM群、V型をG群とし、HLAを決定した。正常対照者(C群)として第11回国際組織適合性学会の日本人データ898名を使用し、HLA抗原頻度を求め、χ^2検定を行った。 【結果】I:8例、II:12例、III:4例、IV:20例、V:13例であり、Total57例、M群の36例、G群の13例、正常対照者のHLA抗原頻度を比較したところclass I抗原に差はなく、class II抗原はDR15の頻度がG群(69%)、M群(36%)、Total(44%)、C群(32%)でありG群がC群より有意に高く(Pc=0.04)、M群より高い傾向にあった。またDR15を示したものに一部DNAタイピングをおこなったところDRB1^*1501と判明した。 【結論】V型(膜性)のループス腎炎はDR15と強く相関し、他の型と遺伝的背景が異なることが示唆された。この結果は第38回日本腎臓学会総会で報告した。
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Research Products
(1 results)