1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07771074
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Research Institution | University of Occupational and Environmental Health, Japan |
Principal Investigator |
大崎 敏弘 産業医科大学, 医学部, 助手 (70248574)
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Keywords | 胸腺腫 / 胸腺癌 / 細胞増殖能 / 遺伝子変異 / 核小体形成領域 / PCNA / p53 / p16 |
Research Abstract |
胸腺腫56例(浸潤型25例,非浸潤型31例)、胸腺癌4例、過形成胸腺17例を対象として、胸腺腫瘍性疾患の悪性度の評価を細胞増殖能と遺伝子レベルの面から解析した。 1.細胞増殖能の解析:核小体形成領域NORsはPlotonの方法に準じ上皮細胞核内のNORsの平均値、PCNAはLabelled Streptavidin Biotion (LSAB)法(一次抗体PC-10)により上皮細胞における陽性細胞数からPCNA陽性率(%)をもとめた。胸腺腫ではNORs数、PCNA陽性率は1.57±0.38, 12.8±10.2、過形成胸腺では1.32±0.12, 3.8±1.5であり有意に胸腺腫において上昇した。病期I期とII期以上の比較ではI期のNORs数、PCNA陽性率は1.49±0.30, 8.8±3.9、II期以上では1.68±0.45, 18.0±13.2であり進行例において有意に上昇した。胸腺癌の平均NORs数、PCNA陽性率は2.62±0.46, 17.4±4.6で胸腺腫、過形成胸腺より高値であった。 2.遺伝子変異の解析:p53蛋白の発現はLSAB法(一次抗体DO-1)、p53突然変異はExon5-8についてPCR/SSCP法、p16遺伝子変異はLSAB法(一次抗体C-20)により検索した。胸腺腫のp53蛋白陽性率は5.4% (3/56)であった。p53蛋白陽性3例(3例とも浸潤型)ではNORs (1.69, 2.17, 2.21)、PCNA(26.4, 45.9, 60.4)であり、陰性例より高値を示した。p53突然変異の検出は上皮細胞が50%以上を占める9例で行ったが検出できなかった。胸腺癌4例中、p53蛋白陽性は1例、p53突然変異は1例(Expn5および7にGからTへの塩基置換)に認めた。p53蛋白陽性1例およびp53突然変異1例ではNORs (2.29, 3.12)、PCNA (21.5, 21.0)と高値を示した。p16免疫組織染色は現在、至適条件を検討中である。今回の解析結果から、これらの因子は細胞形態学的評価に加えて胸腺腫瘍性疾患の悪性度の指標として極めて重要であり、p53遺伝子異常は増殖能に強く関与している可能性が示唆された。
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