1995 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト慢性関節リウマチ患者滑膜組織のSCIDマウスへの移入とリウマチ発症機構の解明
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07771139
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Research Institution | Toyama Medical and Pharmaceutical University |
Principal Investigator |
松野 博明 富山医科薬科大学, 医学部, 助手 (00219461)
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Keywords | 慢性関節リウマチ / SCIDマウス |
Research Abstract |
慢性関節リウマチ(RA)の病態解析を目的として種々の実験関節炎モデルが用いられているが、ヒトのRAそのものを再現した動物モデルは現存しない。SCIDマウスは機能的なT細胞とB細胞を欠くため異種移植片に対する拒絶反応を起こさないことから、ヒトの疾患を導入することが可能な実験動物として注目されている。今回、RA患者の滑膜組織をSCIDマウスに移入し、ヒトRA滑膜組織がSCIDマウスに生着するか否か、またRA患者に見られる関節炎をSCIDマウスに再現することが可能か否かを明らかにすることを目的として研究を行なった。 手術時採取したRA患者の滑膜組織をSCIDマウスの皮下組織に移植した。関節炎が誘導されるか否かを8週間観察し、犠牲に供し、移植した滑膜組織および四肢の関節の組織学的構造、移植した滑膜組織、マウスの末梢血、胸線、脾臓、末梢リンパ節へのRA患者由来リンパ球の有無について検討した。 本研究の結果、移植片はRA滑膜組織としての組織学的構造が保たれ、またCD4、CD8、CD20陽性リンパ球もまた生着していることが実証された。しかし、マウスの末梢血、胸線、脾臓、末梢リンパ節へのRA患者滑膜組織由来の免疫担当細胞の移行は証明されず、また、マウスへの関節炎誘導も見られなかった。以上の結果から、RA滑膜組織はSCIDマウスへの移植後も良好に生着し、本実験系がRA滑膜炎のin vivoの研究モデルとして有用な系があることが示された。しかし、RA滑膜組織の移植のみではマウスにヒトのRAを再現し得ないことが明らかとなった。これまで我々はSCIDマウスII型コラーゲン誘導関節炎(CIA)を誘導するために、CIAマウス由来のリンパ球移入とその抗原であるII型コラーゲンの再感作が必要であることを証明した(KM Kadowaki et al,Clin Exp Immunol 1994)が、今回の研究結果から、未だ不明であるRAの抗原と考えられている物質のSCIDマウスへの感作を加えることによってヒトのRAの再現をすること、それによってRAの原因の解明が可能であると考え、さらに研究を進めている。
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