1995 Fiscal Year Annual Research Report
内耳における炭酸脱水化酵素の局在およびその役割について
Project/Area Number |
07771463
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Research Institution | Fukushima Medical University |
Principal Investigator |
岡村 洋沖 福島県立医科大学, 医学部, 助手 (50244372)
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Keywords | 炭酸脱水酵素 / 酵素組織化学 / 酵素活性 / 内耳 / 固定方法 / 脱灰方法 |
Research Abstract |
内耳における炭酸脱水酵素(CA)の正確な局在の決定には酵素活性の保存と組織構造の保持という矛盾した課題の克服を必要とする。この課題を解決するため固定や脱灰が、酵素活性や組織構造の保持、CA活性の局在にどのような影響を及ぼすかについて検討した。そして、この結果を基に内耳におけるCA局在を調べた。 モルモット側頭骨を対象にCAの総窒素量に対する比活性を求め、残留窒素量を比較した。その結果、無固定無脱灰、10日間放置によりCAは約70%が失活し、脱灰を加えると約90%失活し、組織構造の保存も極めて悪かった。固定により活性は対照の3-5%まで減少したが、固定法の相違による失活の著しい差異は認められなかった。また、いづれの固定法でも組織構造は保存されたが、全身+蝸牛灌流固定で最も良好な形態保存が得られた。EDTAとPLANK-RYCHLO氏液による脱灰で、活性が比較的保持されたが、トリクロル酢酸では著しく失活した。この結果、内耳CA組織化学には、組織構造と活性保持の点から、全身+蝸牛灌流固定法とEDTAによる脱灰が良好な結果を与えると結論された。 以上の結果を基に、モルモット内耳におけるCA活性の局在を調べた。コルチ器では内有毛細胞、外有毛細胞蓋板、神経終末、内指節細胞、ダイテルス細胞に、血管条では血管と密接な位置関係を有する中央帯にその局在を認めた。ベッチャー細胞やラセン神経節の核、ラセン靱帯とVasculo-epithelialzoneの線維芽細胞にも局在を認めた。この結果は、これまでの報告とおおよそ一致していたが、相違点も認められた。これは、上述の固定法および脱灰法によりCAの失活や拡散もなく、組織構造が保持されたためと考えた。この結果は内外リンパの産生や吸収、内外リンパと内耳組織のイオン交換を考える上で意義ある結果を示した。
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