1995 Fiscal Year Annual Research Report
Acid shock(急激なpH低下)に対する歯垢細菌の応答の生化学的機構
Project/Area Number |
07771650
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
高橋 信博 東北大学, 歯学部, 助手 (60183852)
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Keywords | 歯垢細菌 / Streptococcus sanguis / Streptococcus mutans / acid shock / pH / 糖代謝酵素 / 増殖能 / 糖代謝能 |
Research Abstract |
歯表面の歯垢細菌は糖代謝によて酸を産生し、歯表面のpHをわずか数分で中性から4程度の酸性に激変させ、歯質の脱灰(=ウ蝕)を引き起こす。低pH環境はウ蝕というHost側への作用だけではなく、歯垢細菌自身にも影響を与え、歯垢細菌の酸性環境への適応や歯垢細菌叢の変化をもたらす。そこで本研究では、代表的な歯垢細菌Streptococcus mutansとStreptococcus sanguisを“急激なpH低下(pH7→4)"に曝し、そのまま60分間低pHの状態におき、その時の細菌の変化を調べた。 S. sanguisでは糖代謝能、増殖能とも傷害され、そのとき、糖代謝系酵素のうちGlucokinase(GK)、Phosphofructokinase(PFK)、Glyceraldehyde phosphate dehydrogenase(GPDH)、Enolaseの活性が50%以下に減少していた。再びこの菌をpH7の培地に戻しインキュベートすると、これらの酵素活性は約2時間かけて徐々に回復し、同時に糖代謝能も回復した。また、糖代謝能が回復するにつれ増殖能も回復した。一方、S. mutansでは糖代謝能、増殖能とも酸傷害を受けず、糖代謝酵素の失活も見られなかった。 以上のことから、“急激なpH低下"に続く60分間の低pH環境によってS. sanguisの糖代謝能および増殖能は傷害され、この時GK、 PFK、 GPDH、 Enolaseという糖代謝系酵素の失活を伴うことが明らかになった。この菌を再び生育に適した環境に戻すと酵素活性が回復したことから、この酸傷害は可逆的であり、酸傷害により失活した酵素を再活性化するシステムの存在が示唆され、S. sanguisはpHが中性と酸性の間を変動する歯垢環境にうまく適応していることが考えられた。一方、S.mutansは酸傷害を回避し、糖代謝能と増殖能を維持したことから、ウ蝕病巣内など常に低pHが持続しやすい環境にも適応できることが考えられた。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] N. TAKAHASHI: "Effect of rapid acidification on oral streptococci" Journal of Dental Research. 74(S). 507 (1995)
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[Publications] K. ABBE: "Sorbitol inhibition on sugar metabdism of plaque microorganisms" Journal of Dental Research. 74(S). 506 (1995)
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[Publications] 高橋 信博: "急激なpH低下が口腔レンサ球菌の糖代謝能と増殖能に与える影響" 歯科基礎医学会雑誌. 37(補冊). 224 (1995)
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[Publications] 阿部 一彦: "Streptococcus mutansの事前のソルビトール代謝が引き続くグルコース代謝に与える影響" 歯科基礎医学会雑誌. 37(補冊). 119 (1995)
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[Publications] N. TAKAHASHI: "Phosphorylating enzymes involved in glucose fermentation of Actinomyces naesludnii" Journal of Bacteriology. 177. 5806-5811 (1995)
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[Publications] N. TAKAHASHI: "Effect of acetate on sorbitol fermentation by oral lactobacilli" Oral Microbiology and Immunology. 10. 349-354 (1995)