1995 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト歯周ポケット内細菌の菌体間相互作用の免疫電顕法による検索
Project/Area Number |
07771766
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
野杁 由一郎 徳島大学, 歯学部, 助手 (50218286)
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Keywords | 歯肉縁下プラーク / 細菌バイオフィルム / グリコカリックス / 走査型電子顕微鏡 |
Research Abstract |
近年,感染症学の領域では新しい細菌の定着・増殖メカニズムとして細菌バイオフィルムによるバイオフィルム感染症という新しい概念が導入され,慢性及び難治性感染症の病態概念として注目されている。一方,これまで歯周炎における歯肉縁下プラークの成長には異種細菌間の相互作用が重要視され,この新しい病態概念と歯周炎との関連については未だ全く検討されていない。そこで本研究では,歯肉縁下プラーク細菌の定着・増殖における細菌バイオフィルムの関与について検討するため,重度歯周炎罹患抜去歯を走査型電子顕微鏡検索に供した。歯肉縁下プラークを便宜的に歯冠側部,中央部,根尖側部及びプラークフリーゾーンの4領域に分割し,各領域で観察される歯肉縁下プラーク細菌の形態型及び定着・増殖形態について微細形態学的に検索した。その結果,歯冠側部では球菌、桿菌などがglycocalyx様の網(目)状構造物により結びつきフィルム状集落を形成していた。中央部では,血球に種々の細菌が凝集したような像がみられた他フィルム状の集落も観察され、フィルム内より湧出してきたと思われる線状菌や既に遊離した細菌の抜け穴が認められた。根尖側部では多種類の細菌がglycocalyx様の網状あるいは粘液様構造物を介して集落を形成しており,中央部の細菌叢よりさらに複雑な様相を呈していた。また,プラークフリーゾーンでは菌体が直接歯面に接している細菌だけでなく、菌体表層をglycocalyx様の網状構造物に被覆され,その構造物を介して根面に付着している細菌種が観察された。以上の結果より,歯肉縁下プラークの定着・増殖には部分的に細菌バイオフィルム形成メカニズムが関与していることが示唆された。現在,走査免疫電顕法により,バイオフォルム形成細菌の同定を行っている。
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[Publications] 野杁 由一郎ら: "ヒト歯肉縁下プラークの研究-プラーク細菌の定着・増殖における細菌バイオフィルムの関与について-" 日本歯周病学会会誌. 37. 329-336 (1995)
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[Publications] 野杁 由一郎ら: "ヒト歯周ポケット底部における歯周病関連細菌の免疫電顕法による検索" 日本歯周病学会会誌. 37秋期特別号. 128-128 (1995)
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[Publications] 野杁 由一郎ら: "ヒト歯肉縁下プラークの研究-プラークフリーゾーンにおける歯周病関連細菌の走査免疫電顕法による検索-" 日本歯周病学会会誌. 38. 60-68 (1996)