1995 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト脊髄抑制性介在ニューロンの噛みしめに伴う変調に関する生理学的解析
Project/Area Number |
07771834
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
宮原 隆雄 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (50251533)
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Keywords | ヒラメ筋 / H反射 / 抑制性介在ニューロン / 相反性la抑制 / 脊髄単シナプス反射 / 噛みしめ / 口腔機能 / 脱抑制 |
Research Abstract |
これまで研究代表者らは、下腿の伸筋であるヒラメ筋の運動ニューロンプールの興奮性が噛みしめの強度と有意な正の相関をもって上昇していることを示した。しかしながら、このような運動ニューロンの興奮性の上昇にどのようなメカニズムが関与するかは不明であった。想定されるメカニズムとしては、1)運動ニューロンへの興奮性の入力、2)運動ニューロンの活動性を調節している抑制性ニューロンの活動の減弱という2つが考えられる。そこで本研究においては、相反性神経支配による円滑な運動の遂行および運動の調節に関与する脊髄の抑制性介在ニューロンの活動性を下腿の相反性抑制を指標として検索した。ヒラメ筋のH反射は、ヒラメ筋の拮抗筋である前脛骨筋を支配する総腓骨神経に加えられた電気刺激によって有意に減弱されるが、この相反性抑制は安静時と比較して、噛みしめ時には有意に減弱していた。すなわち、抑制系が抑制される脱抑制が噛みしめに伴って生じていた。しかしながら、このようにH反射の振幅を基準にある条件刺激を加えてその効果を見る場合、基準となるH反射の振幅が変化するとその効果が見かけ上変化することが知られている。本研究の場合、噛みしめによってH反射の振幅は促通を受けるため、安静時に比較して大きくなっている。このため見かけ上噛みしめに伴って相反性抑制が減弱しており、本質的には抑制性介在ニューロンの活動性に変化がない可能性がある。そこで、H反射の振幅を変化させた時に見られる相反性抑制の効果の変化と今回の噛みしめに伴う減弱率を比較してみると、H反射の振幅が増大すると見かけ上の抑制率は減少するが、噛みしめに伴う抑制率の減少はそれより有意に大きかった。したがって、噛みしめに伴って脊髄の抑制介在ニューロンの活動性は抑制されていることが結論される。
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