1995 Fiscal Year Annual Research Report
海馬遅発性神経細胞死におけるカリクレイン-キニン系に関する研究
Project/Area Number |
07772200
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Research Institution | Kobe Gakuin University |
Principal Investigator |
榎本 理世 神戸学院大学, 薬学部, 実験助手 (40258108)
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Keywords | 脳虚血 / 遅発性神経細胞死 / スナネズミ / 海馬 / カリクレイン / カリクレイン-キニン系 |
Research Abstract |
海馬CA1は虚血に対して特に脆弱であるが、この海馬遅発性神経細胞死(DND)には細胞内Ca濃度上昇による種々のC2依存性酵素の活性化が関与すると考えられている。ところで、デラジキニンはPIレスポンスを介して細胞内Ca濃度を上昇させ、ホスホリパーゼA2を活性化することが知られている。また、ブラジキニンは虚血後の浮腫の発生にも関与すると考えられている。これらはカリクレイン-キニン系のDNDへの関与を示唆するものであり、DNDにおけるカリクレイン-キニン系の意義を解明するために虚血によるカリクレイン活性の変化について検討した。 虚血はスナネズミ二血管閉塞により行い、3.5分間の虚血負荷後血流を再開させた。一定時間後に海馬を摘出し、酵素標品を調製した。本酵素標品と合成基質のPro-Phe-Arg-MCAを反応させ、生成したAMCの蛍光強度を指標にカリクレイン活性を測定した。コントロール海馬のカリクレイン活性は0.709±0.074nmol/mg protein/minであった。虚血24時間後の活性は0.604±0.005nmol/mg protein/minでコントロールに比べて有意な変化は認められなかった。虚血48、72および120時間後のカリクレイン活性についても測定を行なったがいずれも虚血による有意な変化は観察されず、神経細胞の脱落が起こっている虚血120時間後においてもカリクレイン活性は正常レベルを示した。大脳皮質(線条体を含む)、脳幹(中脳、視床下部および橋・延髄)および小脳の3部位についても同様の検討を行なったがいずれも有意な影響は認められなかった。以上のように、本実験結果からはDNDにおけるカリクレインの関与を明らかにできなかった。しかしながら、アルツハイマー型痴呆患者脳においてカリクレイン様活性が有意に低下しているとの報告もあり、虚血後の記憶・学習障害との関連からもDNDにはカリクレイン-キニン系は関与していないと結論づけるのは早計であると思われる。
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