1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07780026
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Research Institution | Toyoko Gakuen Women's College |
Principal Investigator |
谷田貝 麻美子 東横学園女子短期大学, その他部局等, 助教授 (20200595)
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Keywords | 天然染料 / 劣化 / 光 / 繊維 / 変退色 |
Research Abstract |
染織文化財の劣化に関する基礎的研究として、天然染料染色布の光による劣化現象について検討した。伝統的な天然染料として紅花・茜・コチニール・黄はだ・ログウッド、およびそれらの主要色素であるカーサミン・プルプリン・カルミン酸・ベルベリン・ヘマトキシリンで、綿および絹布を染色し、これにキセノンランプを光源として光照射を行った。照射時間を変えた試料について、未照射試料との色差から変退色を調べた。また、縦糸の引張り強度、染色布のpH、水分率の変化もあわせて調べ、繊維の物理的・化学的な構造変化についても検討した。 光による染色布の変退色は、綿・絹ともに紅花>黄はだ>コチニール>茜、ログウッドの順となったが、その大きさは繊維基質により異なった。天然染料による染色布と主要色素のみによる染色布の変退色を比較すると、後者の方がやや大きくなったものの大体よい対応がみられ、複数の色素成分を含む天然染料の変退色は、その主要色素のみを用いてモデル的に検討できることが確かめられた。光による強度低下では、染料による劣化促進効果が認められ、とくに絹において顕著であった。また、照射時間の増大に伴って染色布のpH、水分率ともに若干の低下がみられた。これらのことから、光照射は染料の変退色とともに、繊維分子鎖の切断とそれに伴う官能基の生成や結晶化度の変化などをもたらすことが推測されるが、変退色の程度と繊維の構造変化の程度とは必ずしも対応しておらず、染料および媒染剤が劣化に伴う繊維の構造変化に大きく影響していることが明らかとなった。
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