1995 Fiscal Year Annual Research Report
19世紀後半のイギリスにおける体操関連用語に関する研究-主に、初等教育文書にみるdrill, calithenics, gymnasticsを中心として-
Project/Area Number |
07780087
|
Research Institution | Tokyo Seitoku University |
Principal Investigator |
榊原 浩晃 東京成徳大学, 人文学部, 講師 (50255220)
|
Keywords | 19世紀末イギリス / 初等教育 / 体育授業 / 学校体育史 / 体操関連用語 |
Research Abstract |
本研究は、19世紀後半のイギリスの体操関連用語を、初等教育の体育授業やその指導に限定して、体操関連用語の使用頻度、用語の意味内容、及び用語の時代推移(1870年代から1890年代まで)を明らかにしようとする体育用語(史)に関する研究である。体操関連用語として、1870年代から主として初等教育文書にみられるのは、military drillあるいはdrillという用語である。内容論からみると訓練的概念である。ただし、extension mothionなどの体操的要素は存在していた。初等教育文書としての視学官報告には、これ以外にも多くの体操関連用語が散見される。特に、drillが男子児童に対する訓練的概念であるのに対し、女子児童に対するcalisthenics(あるいはcalithenics, callisthenics)という体操関連用語も見られる。 1880年代以降から、これらの体操関連用語に大きな変化が生じる、諸外国からの体操文化の影響が体操用語にも反映されているとみてよい。具体的に、最も適切な体操用語としてのgymnasticsも一部には使用されているが、ロンドンの都市部の初等学校を中心にスウェーデン体操が紹介されると、初等教育文書にも新しい体操用語としてSwedish drillがみられるようになる。1880年代以降のdrill概念は、明らかに体操の意味内容を有している。スウェーデン体操を英語ではSwedish gymnasticsとは言わない。drill概念が明らかに体操の意味内容を有する時期はこの研究によって1880年代以降であると結論づけられる。しかし、体操関連用語としてのgymnasticsは、おそらくイギリスではドイツ系体操を意味する場合が多いとみなせる。gymnasticsについては、その派生語としてgymnasium(体操場)あるいはgymnastic instructor(体操指導者)、gymnast(体操家)など多くの用語を有する。本研究に関連する事柄として、特にイギリスではgymnasticsあるいはgymnasiumの用語としては1820年代にまで遡ることも明らかになった。
|