1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07780092
|
Research Institution | Toyo University |
Principal Investigator |
宇佐美 隆憲 東洋大学, 文学部, 講師 (70184463)
|
Keywords | 神事相撲 / 類型 / 構造 / 村落 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本に存続している神事相撲の類型を考えていくこてにあった。この研究を進めて行くにあたり、最初に、神事相撲を定義した上で、その条件を満たしている相撲を抽出した。神事相撲の定義としては、暫定的ではあるが、祭礼場面で神事の一部として実修されているものを神事相撲とした。この定義に当てはまる相撲を抽出すると、その分布は日本全土にわたっていたが、事例数からするとそれほど多くはなかった。 次に、神事相撲の類型を考えるために、神事相撲の構造を分析した。分析にあたっては、2ヵ所の事例を抽出した。一つは愛媛県吉田町の「卯之刻相撲」であり、もう一つは、沖縄相撲である。 本来、沖縄相撲の場合には、神事的な性格がそれほど強くなく、それよりも村落共同体における一種の娯楽としての機能を持っていたようである。このような沖縄相撲の状況に対して、愛媛県の卯之刻相撲は、元々、神事として伝承されてきたが、本来もっていたはずの構造は、現在すでに崩壊寸前の状態にある。ところが、この一方で形式化され、いわゆる伝統の価値づけがなされることによって、表面的な構造は強化されるという特徴がみられた。このような変化は、「村おこし」と連動した動きでもあり、さらに、伝統的な行為に現代的な価値観を付与することによって格式化するという行為であったのだ。 以上のことから、次のような結論を導き出すことができた。神事との結びつきを促進しているのは行政組織であった。また、相撲と神事の結びつきは目に見える形で構造化されている点に現在的な神事相撲の特徴があったのである。つまり、神事と相撲の結びつきが視覚化されることによって、神事相撲に価値を持たせる演出がなされていたのである。ところが、常にこのような変容を辿るわけではなく、この変容の行方は、村落構造の変化と密接に関連していたのである。
|