1995 Fiscal Year Annual Research Report
1920年代欧米における創造的自己表現を重視した教育理念構想の史的解明
Project/Area Number |
07780172
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
石崎 和宏 秋田大学, 教育学部, 講師 (80250869)
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Keywords | 自己表現 / 新教育運動 / チゼック |
Research Abstract |
本研究は、1920年代の欧米での新教育運動の展開過程において論議された創造的自己表現を重視した教育理念構想を史的に解明することを目的として次のような考察を行った。 第一に、欧米での新教育運動の啓蒙過程において重要な役割を果たした国際新教育連盟会議での論議を考察の対象とし、特に、1923年の国際新教育連盟会議における「子どもの創造的自己表現」の論議から、チゼック(Cizek,F.)の見解と実践事例にみられる青少年の造形美術での創造的自己表現にかかわる基本理念を分析して、子ども観、教育の方法的原理の視点から構造化を試みた。それによって、個性の尊重、ならびに自発的興味と多面的活動の重視が強調された造形美術における創造的自己表現論の知見を明確化した。また、チゼックの美術教育理念が、イギリス、アメリカで強い支持を得て拡大し、実践の理念的な拠り所とされた背景を、両国での新教育運動の広がりとの関連で検討した。 第二に、1920年代オーストリアの教育改革における芸術の創造的自己表現を重視して試みられた統合的な芸術カリキュラムの具体的な検討として、ウィーンの国立実験学校のおけるカリキュラムを事例的に考察した。それによって、ウィーンの国立実験学校で試みられた芸術的な自己表現を重視したカリキュラムの内容ならびに教育方法には、ゼチックやライナー(Rainer,O.)らによる芸術的な創造的自己表現を重視した教育改革の具体化が構想されていることを明らかにした。また、統合的で自己活動的な芸術的自己表現が重視された背景には、第一次世界大戦後のオーストリアの教育改革が、“Vom Kindeselbstauszugehen"という語にも象徴されるように子ども中心の考え型に基づき、特に初等教育改革において「自己活動の原理」、「郷土の原理」、「合科教授の原理」に基づくカリキュラムを推進するなど、国策による新教育運動の理念推進があり、その意義を論考した。
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