1995 Fiscal Year Annual Research Report
数学の理解過程における直観と論理の相補性に関する実証的研究
Project/Area Number |
07780184
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
小山 正孝 広島大学, 教育学部, 助教授 (30186837)
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Keywords | 数学理解 / 直観 / 論理 / メンタルモデル / 反省的思考 / 2軸過程モデル / 相補性 |
Research Abstract |
本研究の目的は,メンタルモデルと反省的思考という二つの概念に着目することによって,数学の理解過程における直観と論理の相補性を実証的に解明することであった。そのために,まず,メンタルモデルと反省的思考に関する文献研究を行い,数学理解のいくつかの階層的水準を縦軸に,各水準における三つの学習段階(直観的段階,反省的段階,分析的段階)を横軸にもつ「数学理解の2軸過程モデル」を理論的に構築した。 そして,「長さ」の概念について,子どもがどのようなメンタルモデルを構成しているか,子どもが各自のメンタルモデルに対していかに反省的思考を働かせ,どのようなメンタルモデルを構成するかを明らかにするために,授業観察法や質問紙法及びインタビュー法によって調査した。こうして得られたデータを,2軸過程モデルを一つの分析の枠組みとして用いて分析し,直観と論理の相補性を実証的に解明しようとした。 その結果,「長さ」の概念について子どもが構成しているメンタルモデルとして,(1)両端が揃っている場合には,曲がっている方が長い,(2)2点を結ぶ最短距離は直線であるから,その直線に近いものの方が短い,(3)閉じた平面図形の辺の長さはその面積に比例する,が明らかになった。これらのメンタルモデルは数学的に誤った見越的直観につながり得るものである。しかしながら,授業での教師と子どもあるいは子どもたち同士の相互作用を通して,子どもが各自のメンタルモデルに対して反省的思考を働かせ,文字式という論理に裏づけられたかなり確固とした直観をもつことができる,ということが明らかになった。このことは,数学の理解過程において直観と論理が相補的な関係にあるとき数学的思考は生産的かつ確実に進展し得るということを,例証するものである。さらにこの結果から,「数学理解の2軸過程モデル」の妥当性がある程度,実証的に裏づけられたと言える。
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Research Products
(1 results)