1995 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
07780469
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
倉西 良一 千葉県立中央博物館, 環境科学研究科, 学芸研究員 (10250143)
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Keywords | 湿原 / 環境構造 / 水温環境 / 多様性 / 生物群集 |
Research Abstract |
湿原内には、さまざまな規模の水環境が存在する。湿原に生息する水生昆虫類は、さまざま水環境に対して環境選好性をもち、生活史に明らかな適応がみられる。本研究では、水生昆虫の生息環境であるさまざまな水塊(止水、流水)の水温変動を定量化し、パターンからいくつかのタイプに分類し湿原環境の環境構造を明らかにすることを第一の目標とした。湿原内の水環境(A)ミズゴケを主体にした池糖地帯:(A-1)融雪期や降雨直後には水がたまっている一次的な水塊、(A-2)水深20cm未満の浅い池糖、(A-3)深い池糖(B)湿原内の湧水流(細流)、(C)スゲ帯:(C-1)植生の下に水があるところ(浅い)、(C-2)植生の下に水があるところ(深い)、(D)ヨシ帯:植生の下に水があるところ、(E)開放水面をともなう大きな水塊、のように分類しマイクロデータロガーを設置水温の自動測定を行った。今回の調査は夏期から冬期(1995年8月〜1995年12月)にかけて行われた。 水温環境の詳細な結果はデータ処理中であるが、これまでに明らかになった結果の概要は以下の通り(1)ミズゴケを主体にした池糖地帯では、地点間の水温変動のパターンに大きなちがいがあった。(2)ミズゴケ帯は、平均して他の地点よりも水温が高い傾向にあった。(3)水温の日較差もミズゴケ帯がスゲ帯に較べて大きく変動の幅も大きい傾向にあった。(4)水温の日較差は、日照時間と有意に正に相関していた。しかし回帰直接は、地点間で大きく異なり同じ日照時間であればミズゴケ帯がより暖められやすく水温が上昇すると考えられた。 これらの結果から、ミズゴケ帯にみられた生物相の多様性の存在様式が明らかなものとなった。今後の解析では、水温変動と個々の種の成長様式、生産速度を測定し湿原に生息する生物の生活史を分布を規定する要因に解明したいと考えている。
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