1995 Fiscal Year Annual Research Report
極東の湿地におけるシギ、チドリ類の越冬環境および採食場所の解析
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07780470
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Research Institution | Natural History Museum and Institute, Chiba |
Principal Investigator |
桑原 和之 千葉県立中央博物館, 生態学研究科, 学芸研究員 (60250164)
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Keywords | シギ / チドリ / 干潟 / 越冬 / 湿地 / 底生生物 / 砂浜海岸 / ミユビシギ |
Research Abstract |
極東地域のシギ、チドリ類の個体数および生息環境の調査を行った。現地調査は、主として能登半島で行い、南西諸島、特に沖縄島や石垣島などの資料、文献調査を行なった。また、能登半島のシギ、チドリ類の越冬場所を砂浜海岸、干潟、河川などに区別し、生息場所が採食場所であるか休息場所であるかを明確に区別するために、個体ごとに行動の記録も行なった。石川県高松海岸では定期的に個体数を計数すると同時に底生生物のサンプリングを行った。さらに、高松海岸、田鶴浜干潟、犀川、河北潟などでは渡りの時期と越冬期に観察されたすべての種の個体数を記録した。他のおのおのの調査地でも底生動物や底質も記録し、生息環境の変遷なども調べ、本調査での観察結果などと比較した。調査地ごとにシギ、チドリ類の生息状況は異なっていた。高松海岸では、ミユビシギ、ハマシギが数百羽越冬し、田鶴浜干潟ではシロチドリが越冬し、犀川や河北潟などの湿地て越冬する種は少なかった。砂浜海岸で渡りの時期に砂浜海岸で観察されたミヤコドリは、越冬期に観察されなかった。東京湾などでは、干潟で越冬するが、この種は能登半島の海岸では越冬できなかった。理由は、主な餌であるフジノハナガイが11月以降に生息していないことや冬期二枚貝が分布していないなどの、底生生物の分布や季節的消長が原因と考えられる。また、シロチドリは砂浜海岸で少なく、干潟で多かった。この理由も多毛類などの生息密度と関連があると考えられた。また、ハマシギは湿地に広く分布したが、ミユビシギの分布は砂浜に限定されていた。これらのことにより、餌や得やすさは、砂浜海岸、干潟、泥質干潟、岩礁、サンゴ礁などで異なるため、越冬する種の分布が異なると考えられた。したがって、シギ、チドリ類の生息環境である湿地では、おのおのの調査地での底生動物や底質を記録することにより、指標となる種を特定できることが示された。
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