1995 Fiscal Year Annual Research Report
海馬特異的カルシウム結合蛋白質:ヒポカルシンの生理機能の解析
Project/Area Number |
07780706
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
小林 正明 東邦大学, 医学部, 助手 (70246693)
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Keywords | ヒポカルシン / カルシウム結合蛋白質 / 海馬 / 神経細胞 / ゲノム遺伝子 / 転写調節 |
Research Abstract |
ヒポカルシンは、申請者らが見い出した大脳の海馬に特徴的に存在する神経特異的カルシウム結合蛋白質で、カルシウム濃度の生理的変動を感知して神経細胞内の情報伝達系の効率を調節していると考えられている。今回、ヒポカルシン遺伝子の転写調節機構を解析する目的で、ラット白血球由来ゲノムDNAライブラリーより約13kbpのヒポカルシン遺伝子を単離した。 ラット・ヒポカルシン遺伝子は、約13kbpのゲノム遺伝子中に3個のエキソンに分断されて存在していた。ラット脳の各領域から得た全RNAについて、プライマー伸長反応およびS1マッピングを行ったところ、海馬および大脳皮質では開始コドン上流228bp(T)からヒポカルシンmRNAの転写が開始されていることが明らかとなった。ヒポカルシンの開始コドン上流域約1.5kbpの塩基配列を決定したところ、AP1,NF1およびHSTFなどの転写調節因子の結合配列が認められ、転写開始点上流80bp近辺にはCAATボックスが存在していた。レポーターとしてルシフェラーゼ遺伝子を用い、C6細胞、NG108-15細胞,SH-SY5Y細胞,および胎生20日令のラット脳の初代培養細胞で一過性発現実験を行い、開始コドン上流域約1.5kb中のプロモーター活性を検出した。いずれの細胞でもβactinは強いプロモーター活性を示したが、ヒポカルシン遺伝子には、初代培養細胞でのみ弱いプロモーター活性を認めた。このことから、ヒポカルシン遺伝子のプロモーターは、ごく限られた神経細胞、おそらくは分化した海馬の神経細胞においてのみ活性を発現し得る転写調節機構を持つと考えられる。
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[Publications] Saitoh S., et al: "The development of neural visinin-like Ca2+-binding protein 2 immunoreactivity in the rat neocortex and hippocampus." Neurosci. Res.23. 383-388 (1995)
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[Publications] 小林正明ら: "記憶神経回路とカルシウム結合蛋白質-リカバリンファミリー-" Clinical Calcium. 5. 52-54 (1995)
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[Publications] Takamatsu K., et al: "Hippocalcin." Guide book to calcium-binding proteins.(in press).