1996 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀後半のイングランドにおける実験的自然学の成立と近代的認識論の形成
Project/Area Number |
07801002
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
田村 均 名古屋大学, 文学部, 教授 (40188438)
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Keywords | ジョン・ロック / ボイル / デカルト / 科学哲学 / 実験 / 認識論 / 科学社会学 / 近代 |
Research Abstract |
1)当初計画の基本方針に沿って、ジョン・ロックの『人間知性論』の認識理論を同時代の実験的自然学の実践と結びつけて解釈する試みを継続し、ロックの問題は、表象と実在の関係という近代認識論の定番の問題ではなく、個別的事実と理論という現実の科学的探求の実践に内在する問題であった、という趣旨の「ジョン・ロックの自然科学の哲学」という論文を、『哲学』第47号に発表した。 2)科学社会学の観点からジョン・ロックやロバート・ボイル、ロンドン王立協会等の立場を分析し、科学的認識をめぐる諸問題を17世紀に即して論じた「経験的知識の成立-一所与・効用・社会」という論文を、森際康友編『知識という環境』(1996名古屋大学出版会)に発表した。 3)E・スティリングフリートとロックの論争書簡を研究し、デカルト哲学の問題設定とロックの問題設定との混同が、すでに『人間知性論』発表当時のスティリングフリートのロック理解に現れており、この混同が現代の科学哲学にも影響を与えている、という見通しを得た。この点は、1996年11月16日開催の日本科学哲学会シンポジウム「近代における科学と哲学」において、「哲学的認識論はいつから科学オンチになったのか?」という標題のもとで口頭発表した。論文としては、1997年秋発行の科学哲学会機関誌『科学哲学』第30号に掲載予定である。 4)ボイル、シドナム、スプラットなど17世紀の実験的自然学者たちの主張を吟味しつつ、同時代の保守的学問論とアリストテレス-スコラ自然学をも視野に入れて、近代の実験的自然科学とはどのような知識論上のイデオロギーに立脚するものなのか、を総合的に検討する作業に着手した。 5)表象と実在の関係という近代認識論の定番の問題が、方法論的独我論や内在主義や基礎づけ主義といった現代の科学哲学の知識論の定型と密接につながっていることを明らかにする歴史的・科学哲学的な研究を進める計画である。
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[Publications] 田村 均: "ジョン・ロックの自然科学の哲学" 哲学. 47. 207-216 (1996)
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[Publications] 森際康友 他(共著): "知識という環境" 名古屋大学出版会, 278 (1996)