1997 Fiscal Year Annual Research Report
17世紀後半のイングランドにおける実験的自然学の成立と近代的認識論の形成
Project/Area Number |
07801002
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Research Institution | NAGOYA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
田村 均 名古屋大学, 文学部, 教授 (40188438)
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Keywords | ロック / ボイル / ヒューム / デカルト / 認識論 / 科学 / 実験 / 経験論 |
Research Abstract |
1997年度(平成9年度)は、3カ年にわたった本研究「17世紀後半のイングランドにおける実験的自然学の成立と近代的認識論の形成」の最終年度に当たっているため、総括的な研究を4件公表した(うち1件は印刷中)。第一は、論文「感覚する個人--センス・データ論批判と自然主義--」である。この論文は、古典的経験論と現代の認識分析とを対比し、現代の認識論が陥っている隘路を脱出する手がかりは、むしろ古典的経験論の真のかたちの再興にあることを指摘している。第二は、論文「哲学的認識論はいつから科学オンチになったのか?」である。この論文は、17世紀末以来のいわゆる西洋近代哲学の認識論の定型が、本当の古典的経験論の真のかたちとはかけ離れた反科学的な概念枠に基づいていることを指摘し、本当の古典的経験論が現実の科学活動を真に捉える正しい概念枠であることを主張している。第三は、米国で行われたヒューム・ソサエティでの口頭発表(論文は発表資料集に収録)`The Modern Concept of Man and Hume on Personal Identity´である。この論文は、古典的経験論が社会化された自然主義の方向へとヒュームによって展開される経緯を論じており、現代の知識社会学や社会人類学の見解とヒュームの経験論とが本質的な相似性を持つことを主張している。第四は、論文「デカルトとイギリス経験論」(印刷中)である。この論文は、古典的経験論が、デカルト主義的な枠組みに依拠しつつ、どの側面で根本的にデカルトと異なる思考の枠組みを作り上げたのかを、ロバート・ボイルとジョン・ロックの著作に基づいて実証的に示している。
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[Publications] 田村 均: "感覚する個人-センス・データ論批判と自然主義-" 藤本隆志他編『分析哲学の現在』(世界思想社). 59-92 (1997)
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[Publications] 田村 均: "哲学的認識論はいつから科学オンチになったのか?" 科学哲学. 30. 29-42 (1997)
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[Publications] 田村 均: "デカルトとイギリス経験論" 湯川佳一郎他編『デカルト読本』(法政大学出版局). (1998)
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[Publications] Tamura, Hitoshi: "The Modern Concept of Man and Hume on Personal Identity" The Papers for the 24th Hume Conference. 39-43 (1997)