1997 Fiscal Year Annual Research Report
古ウパニシャッドから原始仏教に至る輪廻思想の問題に関する研究
Project/Area Number |
07801006
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Research Institution | HOKKAIDO UNIVERSITY |
Principal Investigator |
細田 典明 北海道大学, 文学部, 助教授 (00181503)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
今西 順吉 国際仏教学大学院大学, 仏教学研究科, 教授 (70000594)
沼田 一郎 北海道大学, 文学部, 助手 (20261258)
吉水 清孝 北海道大学, 文学部, 助教授 (20271835)
藤井 教公 北海道大学, 文学部, 教授 (70238525)
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Keywords | 輪廻 / 業 / ウパニシャッド / 原始仏教 / 阿含経 / ニカーヤ / アートマン / ヴィジュニャ-ナビクシュ |
Research Abstract |
I.ウパニシャッドにおいて輪廻の原因が欲望に基づくことが明言され、原始仏教ではさらに「欲望→慢→見」という順序で輪廻の原因を分析をするが、「見」とはウパニシャッドや六師外道の思想であり、輪廻に関する議論が中心となっている。これを集成した『雑阿含経』見相応とアビダルマにおける『発智論』見納息の両テキストを対照して基礎的研究としてまとめた。 II.輪廻の主体の問題について、ウパニシャッドでは一般にアートマンによって代表されるが、原始仏典の中からAlagaddupama-sutta(対応漢訳『阿梨?経』)を検討し、「毒蛇の比喩」は仏典では欲望の喩えであり、原始ジャイナ聖典も同様であるが、この経ではアートマンの喩えであり、正しく把握することを説き、輪廻の主体であるアートマンは否定されるのではなく、誤った認識に導くために不可説とされるのである。 III.輪廻によって形成される世界観について、Brhadaranyakopanisad 3,8とのAgganna-sutta(及びその対応漢訳)を比較し、原始仏典においては法が道理となって、業思想によって世界の展開を説明している。しかし、両者の視点が正反対であり、ウパニシャッドでは唯一なるものに帰納していく点が、原始仏教では世界がいかに展開され「苦・無常」であるのかという点が問題となっているのである。 IV.Brhadaranyakopanisadの注釈について、従来Sankara注が参照されていたが、今回Vijnanabhiksuの注釈を発見し、このBrhadaranyakalokaが彼の真作であることを明らかにし、写本を校訂した。現在写本は第二章の途中までであるが、輪廻に関する部分の注釈はサーンキヤの体系に即した内容であり、Sankara注における議論を解明するうえでも重要であり、Vijnanabhiksuによる他のウパニシャッド注の校訂も含めて、さらに研究を進める必要がある。
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[Publications] 細田典明: "古ウパニシャッドと原始仏教-Brhadaranyakopanisad 3,8との関連を中心として-" 印度学仏教学研究. 45-2. (92)-(100) (1997)
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[Publications] Noriaki HOSODA: "An Introduction to the Brhadaranyakaloka." 印度学仏教学研究. 46-2(印刷中). (1998)
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[Publications] 藤井教公: "天台智覬と『梵網教』" 印度学仏教学研究. 45-2. 241-247 (1997)
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[Publications] 藤井教公: "天台智覬と『維摩経』" 印度学仏教学研究. 46-2(印刷中). (1998)
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[Publications] 沼田一郎: "出家者と法の問題" 印度学仏教学研究. 46-2(印刷中). (1998)
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[Publications] 今西順吉: "唯識思想のインド哲学史的背景" 宗教研究. 311. 186-187 (1997)
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[Publications] Kiyotaka YOSHIMIZU: "Der"Organismus"der urheberlosen Veda." Sammlung De Nobili(Wien), 430 (1997)